「家も用意できない男とは」 韓国で“次元の違う”出生率低迷が続く構造的な理由

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 韓国の合計特殊出生率は2023年に0.72と世界最低を記録した。その後、わずかながら回復傾向にあるとはいえ、依然として1を大きく下回ったままだ。「少子化先進国」とも称される日本の1.15(2024年)と比べても、その低迷ぶりは際立っている。背景には、経済的な事情にとどまらない、韓国社会に深く根ざした複合的な要因がある。韓国の社会政策・少子化対策を専門とするニッセイ基礎研究所上席研究員の金明中氏が、その構造を解き明かす。

「上昇婚」の壁と、逆転した大学進学率

 韓国の出生率は2023年の0.72から2024年に0.75、2025年には0.80と、2年連続でわずかに持ち直している。しかしこれは、朝鮮戦争後のベビーブーム世代の子どもたちが結婚適齢期を迎えているという人口構造上の一時的な要因が大きいそうだ。1を大きく下回る状況に変わりはなく、楽観視できる水準にはほど遠いという。

「韓国には『上昇婚』という言葉があります。韓国の女性は、自分より学歴が高い、あるいは収入や資産が多い男性と結婚しようとする傾向が根強い。ところが今や、韓国では女性の大学進学率の方が男性を上回っています。自分より学歴の高い男性と結婚したいのに、そういう男性自体が少なくなってしまった。結婚のハードルがどんどん上がっているのです」(金明中氏、以下同)

結婚費用3400万円、「家」を用意できない男性たち

 文化的な問題に加えて、経済的な障壁も若者の結婚を阻んでいる。韓国では古くから、結婚の際に男性が住まいを用意する慣習がある。しかし2025年時点でのソウル市内のマンション平均価格は約1億5750万円にまで高騰しており、若者が自力で家を準備することはほぼ不可能な状況だ。

「韓国には『チョンセ』という賃貸制度があります。月々の家賃を払う代わりに、マンション価格の5〜6割を保証金として大家に預ける仕組みです。最近はその割合が7〜8割にまで上がっており、1億円のマンションを借りるのに7000万〜8000万円が必要なケースも出てきています。とても若者が一人で用意できる額ではありません」

 結果的に親や親族から借りて新居を準備するしかなく、韓国の結婚費用は平均で3400万円にものぼるのだという。そして、その大半が家の費用だ。

「親の立場から見れば、『家も用意できない男とは娘を結婚させられない』という思いは今も根強い。こうした事情を背景に、金銭的な負担が相対的に少ない外国人女性と結婚する韓国人男性が増えているのです」

教育、ジェンダー、そして男女の断絶へ

 少子化の要因は、結婚にまつわるコストや慣習だけにとどまらない。詰め込み式教育を改善しようと1974年にソウルで導入された「平準化」政策は、皮肉にも大学入試の競争をいっそう熾烈なものにした。有名塾が集中するソウル・江南区などへの人口集中も加速させており、金氏は「教育政策の失敗」と指摘する。

 さらに近年、深刻化しているのが若い世代の男女間の溝だ。女性の社会進出が進む一方で、限られた労働市場をめぐる摩擦が生じており、その対立は2022年と2025年の大統領選挙において、若い男性が保守系候補、女性が革新系候補へと票を割る形で如実に表れた。

「韓国人男性とは結婚したくないと考える女性もいるし、その逆もある。お互いに非難し合っているというのが現状です。出生率のさらなる改善には、こうした複合的な課題への対応が不可欠です」

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「世界最低」は改善も……韓国の出生率が低迷している深刻な理由】の記事では、経済、文化、教育、そして男女間の亀裂が生んだ韓国の「超・少子化社会」の実態について、ニッセイ基礎研究所上席研究員の金明中氏が詳しく解説している。

金明中(きむ・みょんじゅん)
ニッセイ基礎研究所上席研究員。慶應義塾大学大学院 経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士・商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2023年から現職。亜細亜大都市創造学部特任准教授を務めるほか、多くの大学の非常勤講師なども務める。

デイリー新潮編集部

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