「徳島県民の“知る機会”が奪われてしまう」…県はなぜ建築家「石上純也氏」の展覧会を中止に追い込んだのか 背景に後藤田県政で迷走する「県立新ホール」建築問題
文化全体に悪影響が出かねない
――私はアニメや漫画が好きですが、徳島県では「マチ★アソビ」というアニメのイベントが全国的な人気で、私もそのために徳島まで旅行しました。ところが、後藤田さんが知事になってから県の支援の見直しが行われ、中止になったことがありました(その後再開)。どうも、現在の徳島県は、文化政策全体が迷走している印象があります。
石上:僕もなぜ、こんなに混乱しているのか理解できないのです。とにかく、僕たちに協力してくださった県職員のみなさんは、いいホールを造ろうという思いが強く、本当に情熱的でした。日本中の劇場に実際に足を運び、どんなホールにしたいかという思いを語り合いながら進めてきた経緯があります。
その甲斐もあって、僕自身、最高の図面ができたと思っています。後藤田さんが知事になるまでは順調に進んでいたのに、どうしてこうなってしまったんだろうという思いはあります。
――今後、石上さんの展覧会が開催される予定はあるのでしょうか。
石上:幸いにも、JIAの有志のみなさんが新しい会場探しのために動いてくれています。展覧会はできれば早く開催したいですね。今回は中止になってしまいましたが、僕たちがここまで頑張ってきたプロジェクトを見てほしいので、一人でも多くの方に会場まで足を運んでほしいと思います。
そして、現在の公募の案と冷静に比較してほしい。もし、僕たちの案がいいと思ったら、契約は続いているので、ぜひ声を上げていただけると嬉しいですね。図面は完成していて、GOサインが出ればすぐに着工できる。僕はしっかりとこのプロジェクトをやり遂げ、ホールを完成させたいと思っています。
問題に対し、県担当者の回答は
今回の展覧会の中止要請を受け、「デイリー新潮」では展覧会場になる予定だった倉庫を管轄する徳島県の港湾政策課に取材を申し込んだ。以下、その回答を掲載する。
――中止要請に至るまでの時系列について。
県担当者:5月25日に、県の港湾用地に立つ民間倉庫の所有者から、石上氏の展覧会開催の情報を県が把握しました。倉庫は本来、港湾目的で使用されるべきですが、当該地区は賑わいづくりのために用途転換が認められている場所です。県として、この展覧会の内容が賑わいづくりの構想に合致するか内部協議を開始し、最終的に、構想にそぐわないと判断し、倉庫所有者との覚書に基づき、会場として使用しないよう要請を5月29日に行いました。
――中止要請の主な理由は。
県担当者:中止要請の理由は主に2点です。第一に、展覧会の内容が、地域の活性化や観光振興を目的とする地区の「賑わいづくり構想」にそぐわないいうことです。第二に、県が新ホール建設計画を進めている最中にこの展覧会が開催されると、県からの公式な情報発信であると誤解され、県民に混乱を招く恐れが懸念されたことです。
――「賑わいづくり構想にそぐわない」とは具体的にどういうことなのか。
県担当者:当該地区は、水辺空間で子供連れなどが穏やかに過ごせるような賑わいを目指しています。これに対し、今回の展覧会は新ホール建設計画という特定のテーマに特化しており、行政的な側面が強いと判断いたしました。そのため、県が目指す賑わいの方向性とは異なると結論付けられたというわけです。
――「表現の自由の侵害」という批判に対する、県の見解は。
県担当者:県として、今回の判断は展覧会の価値を否定したり、発表自体を制限したりする意図はありません。あくまで、当該施設の利用目的と賑わいづくり構想に照らし合わせた結果であり、倉庫所有者との覚書に基づく個別の要請です。別の場所で開催されることについては、県が介入する立場にはないと考えています。
――情報把握が直前になった理由は何か。
県担当者:イベント開催の報告フローについては、覚書には報告期限などが細かく規定されていませんでした。倉庫所有者が展覧会の具体的な内容を把握したのが5月中旬以降であり、県への報告が5月25日になったため、結果的に県側の判断と要請が開催直前になりました。
第1回【「まさか日本でこんなことが起きるとは…」 徳島県が“気鋭の建築家”の展覧会に「中止要請」 渦中の建築家「石上純也氏」が明かす胸中】では、気鋭の建築家・石上純也氏が設計した「徳島文化芸術ホール(仮称)」の着工がストップしている問題について、また、石上氏の設計案を紹介する展覧会が県の要請によって中止に追い込まれた件について、その経緯や、今の思いについて、石上氏本人に率直に話を伺っています。
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