調理器具は完備で、テナント料も破格…それでも飲食店をオープンできない“とにかくスタッフが集まらない問題” 「人さえいれば…」が合言葉に

国内 社会

  • ブックマーク

地方は働ける人の取り合いが常態化

 何者だかよく分からないのだが、「〇〇ホテルのレストランで働いていた」などと紹介される。だが、実際、料理経験はほぼなく、野菜の皮むきと皿洗いがメイン業務だったりもする。そんな下っ端の人物が飲食店経営者から三顧の礼で招かれると気分が大きくなってしまう。腕は大したことないのに加え、スタッフの陣頭指揮をとったこともないから、店全体のモチベーションが低く、スタッフはスマホを常時いじっている。

 客が来たらそこで手も洗わずお冷やを出したり、野菜を切ったりする。いつしかスタッフは遅刻・無断欠勤をするようになり、料理長自身もやる気が失われ、売上を一部ちょろまかしてギャンブルに使う。まぁ、勝てばその分戻しておけばいいや、といった安直な考えなのである。かくしてその店は再度休業に追い込まれるのである。

 バイトにしても、大手飲食チェーンが時給1300円を出すようになっているため、そこに対抗せざるを得ない。A氏は他にも数軒の飲食店を経営しているが、いずれも10席以内のため、料理長のワンオペでもなんとかなってきた。

 地方の場合、飲食店は通常はワンオペで、予約が入った場合に助っ人を呼ぶことが案外多い。それは、知り合いの主婦だったり学生だったりするのだが、それだけ常時人を雇うのが難しいのである。働く側も「週5回はキツいです。時々忙しい時に手伝うぐらいだったら大丈夫です」なんて言いがち。

 果たしてA氏はこの店舗を借りるか? 焼肉屋にする場合、肉の調達は目途が立っている。その卸業者が肉を焼肉用に切ってくれるそうだ。顔の広い友人が多いため、大規模会合で貸し切りにしたり、何らかのイベントを企画して集客することも可能だろう。だが、この大箱を回す人員のことを考えると頭が痛くなる。

 さて、これからは大資本との早い者勝ち勝負である。不動産屋もA氏が迷い続けていたら新たな声がけをするだろう。「人さえいれば……」これが地方の飲食店開業に向けた嘆きの最大のものである。

ネットニュース編集者・中川淳一郎

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。