「年間の倒産件数が1万を超える可能性も…」 ナフサ不足で起こる「最悪のシナリオ」 特に危ない「3業種」は?

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「注射を打てば打つほど赤字に」

「われわれが生活する経済の現場を見れば、本当にいろいろなことが起きている。国のトップがする発言と、あまりに乖離しています」

 と指摘するのは、ジャーナリストの鈴木哲夫氏だ。

「イラン攻撃が始まって以降、高市首相は“原油については備蓄がある”“石油由来のナフサも来年の年明けまで十分確保している”などと、盛んに説明しています。つまり原油やナフサは総量が確保されていると強調した上で、さまざまな流通上の“目詰まりが起きている”と釈明しているわけです。ナフサを扱うメーカーや業者が商品を出さず止めているのであって、あくまで“現場が悪い”という姿勢です」(同)

 本来、政府がやるべきことがなされていないとして、鈴木氏が続ける。

「各業界におけるナフサの実態調査をして、どこにどれだけ偏りがあるのか数字を出すべきです。つぶさに調べれば、どの製品の価格が上がって物流が滞っているのかが分かり、調整へ動きやすくなる。起こりうる最悪の状況を考え先手を打つことが危機管理なのに、経産省の官僚に話を聞くと“危機感をあおる言動をすれば、買い占めなどのパニックが起こる”と言う。しかし、混乱が起きるからと現状を直視せず“在庫はある”と言い続けるだけでは何も解決しません。高市政権は危機管理を分かっているのでしょうか」

 実際に現場では何が起こっているのだろうか。

「町場のクリーニング店を取材すると、3月ごろから“まずい、まずい”という声が聞こえていました。クリーニング店では、仕上がった際にプラスチックのハンガーにかけてビニールに包んでくれますよね。こういったナフサ由来の製品が値上がりして大変だというのです」(同)

 これだけではない。命を守る医療現場でもナフサ不足の影響は深刻である。

「この4月から注射器が高くなり、1本1200~1500円と普段より1.2~1.5倍ほどの価格になっています。医療費は診療報酬で決まっているので、医療器具が値上がりしたからといって、患者さんから受け取る金額を上げるわけにはいかない。大病院より、かかりつけ医がいるような小さなクリニックの負担が大きく、注射を打てば打つほど赤字になる。倒産するところが増える可能性もあります」(同)

「ほぼ全業種で倒産が増加」

 実は気になる数字がある。今年1月から4月までの企業倒産の件数は3545件(※負債総額1000万円以上)。5カ月連続で前年同月比を上回り、このままのペースで増えるなら年間で1万件を超える可能性が高い。ここまでの高水準は12年ぶりというのだ。

 統計を発表した東京商工リサーチでアナリストを務める本間浩介氏が解説する。

「12年前は東日本大震災の影響が大きかったのですが、今回は著しい物価高や金利上昇などが原因で、症状としてはより深刻です。さらに二極化が拡大し、大企業は賃上げをする体力があり人手も確保できますが、中小企業はそうもいかない。加えてホルムズ海峡封鎖で原材料費やエネルギー価格が高騰し、倒産はほぼ全業種で増えています。リサーチしているコチラの胸が苦しくなるほど、中小企業の皆さんは悲鳴を上げています」

 特に厳しいといわれているのは、物価高の影響をもろに受ける中小企業が多い建設業、運送業、製造業の三つ。建設業関連では、新築や増改築などに絡む「塗装工事業」の倒産が目立つという。

「1~4月の塗装工事業の倒産は48件で、前年同期から26%増加しています。これはバブル経済の1989年以降では過去4番目の高水準で、資材価格の高騰やナフサなどの品薄、人手不足などで倒産が急増しています」(同)

 後編では、塗装工事業の会社を畳んだ男性が明かす、現場の「苦し過ぎるリアル」について報じる。

週刊新潮 2026年5月28日号掲載

特集「スマイル高市首相が目を背ける日本経済の“危機”」より

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