なぜ「THE SECOND」は若手の賞レースより熱いのか 「M-1」から強制退場させられたベテランたちの執念

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残酷な一面も

 この日にトットが披露した3本の漫才は、いずれも見事なものだった。劇場で長く磨かれてきた身体感覚によって、観客を自然に自分たちのリズムへ引き込んでいく。1つの話題で観客を惹きつけて、そのまま6分間、軽やかに走り抜けていった。金属バットの独創性にあふれた肩の力が抜けた漫才も素晴らしかったのだが、3本の漫才の総合的な仕上がりという点でトットに軍配が上がった。

「THE SECOND」は、単なるベテラン芸人の救済企画ではない。むしろ、残酷な一面もある。いったん「M-1」という過酷な競争から解放された漫才師たちを、もう一度、点数と勝敗の世界に引き戻すものでもあるからだ。

 しかも、若手時代とは違って、彼らにはすでに芸歴も実績もある。負けたときに「まだ若いから」「未熟だから」と言い訳することはできない。だからこそ、舞台上には若手賞レースとは違う種類の緊張が漂う。人生の後半戦に入った芸人たちが、もう一度自分たちの芸を世間に問う。その姿は、単なるお笑い番組を超えて、中年以降の再挑戦の物語として受け取られている。

 お笑いの世界では、常に若々しさや新しさが求められているという面はある。だが、漫才という芸は長く続けることで磨き上げられ、深いものになっていく。コンビ間の呼吸、言葉の置き方、相手の反応を待つ余裕、客席の温度を読む勘は、短期間では身につかない。

「THE SECOND」は、ベテラン芸人たちの芸の成熟度を可視化する。「M-1」のような若手の賞レースが「未来のスターを探す大会」だとすれば、「THE SECOND」は「いま本当に面白い漫才師を再発見する大会」なのだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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