悪代官と言えばこの人「川合伸旺」 悪代官以外の出演でも「いつか裏切るんじゃないかと思われていた」

  • ブックマーク

「悪役じゃないのに…」

 興味深いのは、「子連れ狼」の振杖外記は眉毛がつり上がり顔には大きな傷跡、「暴れん坊将軍」の内藤采女は目張りも入って眼力がものすごく、「薩摩飛脚」の伊集院玄八郎は顔が真っ青なゾンビのようになって現れる。外見もド迫力にしているという点だ。

「悪はやっぱり強く見えないと面白くない。悪は第二の主役で必ずしっかり映るわけだから、スタッフから『こうしたらもっと迫力が出る』とアイデアを出されると『よし、やってやるか』という気になるんだよ(笑)。身分が高い役をやるときは、着物の下にたくさん着込んで恰幅よく見せることもよくありました。暑くて大変でも存在感が大事。街を歩いていて、『水戸黄門』で観たとか、『暴れん坊将軍』で怖かったとか言われると、みなさんの心に残ったんだと実感しました」

 忘れられないのは、「水戸黄門」と同じTBSのナショナル劇場枠で放送された「翔んでる!平賀源内」(89年)で、西田敏行が演じる源内と知り合う町奉行・能勢甚四郎だ。

 実験に失敗して長屋を爆破したり竹製の飛行機で空を飛ぼうとしたりする源内は、お白州にウソ発見器(!)などの発明品を持ち込んで事件解決に一役買う。能勢はお白州に出る前に手鏡で髪を気にしたり、源内の実験にハラハラしたり、田沼意次(藤岡琢也)に叱られてしょんぼりしたりとお茶目な顔を見せ、番組ファンには隠れた人気者だった。

 もっとも、放送中は「まったく悪役じゃないのに、いつか裏切るんじゃないかって、みんなに思われていたみたいだねえ」だったらしい。

画家としても活動

 私は出身地が近かったこともありローカルな話題で盛り上がり、いつも気さくに話をしてもらった。マーロン・ブランドやポール・ニューマンの吹き替えでも知られるあの声だ。

 高校時代は美術部に所属し、俳優になってからは童の絵を中心に個展を開くなど画家としても活動した。自然の中で遊ぶ童は可愛らしく、作者の優しさが伝わってくるような作品ばかりだ。

 最後に取材したのは舞台「友情~秋桜のバラード~」の楽屋だった。白血病の副作用で髪が抜け落ちた仲間のため、クラスメイト全員が頭を丸めて励ましたという米国の実話をもとにした作品で、病院長役には川合を含め内容に共感した俳優陣が多数友情出演している。

「こういう作品は家族みんなで観てほしい。生徒役の若い人たちとの共演も刺激になる。楽しいですよ」

 穏やかな笑顔だった。

「時代劇でやるならその後の長谷川平蔵とか、全盛期を過ぎた主人公を演じてみたい。史実でもみんな知らないと思うし、僕が演じたら面白いと思うんだよ」

 2006年、70代での旅立ちは残念だったが、今も多くの出演作で強烈なインパクトを残し続けている。大事にしてきた「存在感」は生きている。

ペリー荻野(ぺりー・おぎの)
1962年生まれ。コラムニスト。時代劇研究家として知られ、時代劇主題歌オムニバスCD「ちょんまげ天国」をプロデュースし、「チョンマゲ愛好女子部」部長を務める。著書に「ちょんまげだけが人生さ」(NHK出版)、共著に「このマゲがスゴい!! マゲ女的時代劇ベスト100」(講談社)、「テレビの荒野を歩いた人たち」(新潮社)など多数。最新刊は三谷幸喜との共著「もうひとつ、いいですか?」(新潮社)。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。