「細木数子」とテレビ界、伏せられた「金銭トラブル」の中身 制作会社へ“前代未聞の要求”

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「美術費」名目で渡す

 やむなく制作会社は要求された金額を出す。頭の切れる細木氏は制作会社が金を出すことを最初から読んでいたのではないかと当時の関係者は振り返る。

「細木さんの家で番組を収録することもあったから、支払った金は『美術費』の名目にした」(当時の関係者)

 細木氏宅をセットの1つと考えたわけで、苦肉の策だった。もっとも、東京国税局はそんな理屈を認めるほど甘くはなかった。たちまち制作会社に税務調査が入る。制作会社は大騒ぎになった。

 細かく調査した東京国税局は最終的に制作会社には法人税逃れなどの悪意はなかったと判断。確かにそれは事実だった。細木氏の無理強いなのだ。

 このため、制作会社にペナルティを与えたり、社名を公表したりすることはなかったが、修正申告を課す。制作会社としては屈辱だった。会社の信用にも関わりかねない。

 制作会社はこの件をテレビ局側にも報告する。黙っているわけにはいかない。細木氏の不当な要求は瞬く間にテレビ界全体に知れ渡る。すると「そこまで横暴な人なのか」と激震が走った。

 テレビ界における細木氏は常に強気で、ゲストの人選はおろか、演出にまで口を出した。メインとはいえ、出演者の権限を完全に逸脱していた。スタッフは我慢しながら番組をつくっていたというのが真相だ。

 そのうえ不当な要求までしてきたのだから、テレビ界の細木氏熱は一気に冷めた。細木氏が「辞める」と口にしたら、止める人間はいなかったのだ。

筆者は2021年の細木氏の死去直後、この件をデイリー新潮で報じた。細木氏サイドから抗議や訂正要求などは来なかった。

 当時のテレビ界側にも問題があった。民放連の放送基準には「占い、運勢判断およびこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしない」とある。だが、それが守られていたとは到底思えない。

 各番組内での細木氏は断定調で「あんた死ぬわよ」「地獄に落ちる」と繰り返していた。信じようとしない人がいると、激しくなじった。

「私の占いに1つもはずれはない」とも口にしていた。テレ朝の番組に至っては「細木数子の緊急大予言シリーズ」であり、一個人を予言者のように扱っていた。細木氏をまるで神のようにしてしまった。

 強い女性はテレビ界で人気者になりやすい。細木氏のみならず、野村沙知代さん、浅香光代さん、和田アキ子(76)、アンミカ(54)、高嶋ちさ子(57)。精神的に自立し、周囲の意見に流されず、自分の考えをしっかりと持っているからだとされている。しかし、強さと正しさはイコールではない。人気と正義も別物であることをあらためて認識すべきだろう。

世界的ヒットの理由

「地獄に堕ちるわよ」は細木氏を知らない海外でも大ヒットしている。4月27日に配信が開始されると、その週のうちに7か国で再生数がベスト10入りした。それが翌週には17か国に増えた。

 なぜ、海外でもウケるのか。それは戸田恵梨香ら出演陣の演技や演出、構成の良さもあるが、第一にはアウトローヒーローのサクセスストーリーだからに違いない。このジャンルは人気になりやすい。Netflixなど配信ドラマをよく観る人はご存じのはず。

 一例は美しくも貧しい女性が麻薬王に登り詰めるまでを描いた大ヒット作「クイーン・オブ・ザ・サウス ~女王への階段~」(米国、2016~21年放送後にNetflix配信)である。主人公のテレサ(アリシー・ブラガ)はドン底の生活を経験し、恋人には裏切られ、麻薬カルテルに蹂躙されるものの、強い心と知恵によって最後は麻薬界を牛耳るようになる。

 美貌を持つ主人公が若いころに経験する貧困、男性による仕打ち、反社会的組織との暗闘、その末に掴む力と富。「地獄に堕ちるわよ」と「クイーン・オブ・ザ・サウス」は全く別の物語だが、ドラマを構成する主な要素は同じなのだ。

 ほかにも同様のドラマは世界各国にある。アウトローヒーローの生涯は人を惹きつける。テレビは表現規制が進んだから、アウトローは主人公にしにくい。配信ドラマの独壇場なのだ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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