今期ドラマの隠れたイチ押し NHK「対決」 「女性差別に加担する女性」を描く

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胸に残る演技

 本作が優れているのは事件の再現ではなく、事件を生み出す“空気”を描いた点だ。違和感を覚えながらも沈黙した人。自分には関係ないと目をそらした人。組織の論理に従った人。こうした行為が積み重なることで、制度的不正義は温存される。ドラマはその構造を可視化していく。

 社会派ドラマはしばしば「白」か「黒」かを明確にし、正義と悪を対立させる。しかし、「対決」は違う。「グレー」のままにしておく罪に踏み込むことで、視聴者自身の姿を映し返す。私たちはどれだけの場面で見て見ぬふりをしてきただろうか。どれだけの瞬間に沈黙を選んできただろうか。

「正しい道とは何なのか」……主演の松本は、その問いを押しつけがましくなく、しかし確実に、胸に残る形で投げかける。「対決」は、彼女のキャリアにおいても、現代の社会派ドラマにおいても、“グレーの時代”を照らし出す作品として記憶されるのではないだろうか。

 最終回となる第5話は5月3日(日)午後10時からの放送だ。

碓井広義(うすい・ひろよし)
メディア文化評論家。1955年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。テレビマンユニオン・プロデューサー、上智大学文学部新聞学科教授などを経て現職。新聞等でドラマ批評を連載中。著書に倉本聰との共著『脚本力』(幻冬舎新書)、編著『少しぐらいの嘘は大目に――向田邦子の言葉』(新潮文庫)など。

デイリー新潮編集部

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