南沙良、原田知世、工藤遥、土屋太鳳…青春がきらめく「悩める高校生」を描いた映画5選【春から初夏への映画案内】

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恋・友情・スポーツの青春映画

〇「春待つ僕ら」(2018年)

 次に紹介するのは、友人を作れずに悩む女子高生が、四天王と言われる男子生徒たちと出会い変わっていく物語だ。

 高校に入学した美月(土屋太鳳)は、友だちを作れなかった中学時代を繰り返したくなかった。しかし、何をやっても報われず、相変わらずの一人ぼっちだ。そんな美月のバイト先に、同じ学校のバスケットボール部員、永久(北村匠海)、恭介(磯村勇斗)、竜二(杉野遥亮)、瑠衣(稲葉友)が現れる。

 美月は派手な彼らを敬遠していたが、次第に心を許し始める。特に永久の真面目な人柄に惹かれ始めた頃、幼馴染みの亜哉(小関裕太)と再会する。亜哉は高校バスケット界の期待の選手で、4人のライバルだった。

 学内の生徒たちが美男美女ばかりで現実味がないとか、設定がありきたりだという声もあるかもしれない。しかしこの作品、意外にも物語に引き込まれるのだ。

 その理由の一つは、今や誰もが主役級の俳優に成長した実力者を揃えていることだろう。土屋は「私にとって制服ものはこれが最後かなと思って、女優の卒業試験のつもりで臨んだ」と公開当時に語っている。

 もう一つはバスケットの試合のリアルさだ。スポーツ場面がある作品は、実際の競技の迫力が再現できずに興ざめしてしまうことがある。しかし本作は本物の試合を観戦しているように楽しめる。

 それもそのはずで、小関を除く4人はバスケ経験者。それでもクランクインの数カ月前から特訓を続け、日を追うごとにチームの一体感が出来上がったという。

 恋、友情、スポーツと、青春映画の必須アイテムが揃った王道映画を楽しんでもらいたい。

開演までの2時間

〇「櫻の園」(1990年)

 4月の創立記念日に、毎年チェーホフの「櫻の園」を上演する女子高演劇部が舞台だ。

 開幕2時間前の早朝の部室、部長の由布子(中島ひろ子)がパーマをかけた髪で登校し部員たちは驚く。紀子(つみきみほ)はタバコを吸って補導されたことがわかる。知世子(白島靖代)は、主人公のラネフスカヤを演じることが不安だったが、由布子が優しく励まし2人の間にある感情が芽生えた。やがて幕が開こうとしている。

 ほとんどの場面が部室で撮影されていて、作品自体が舞台劇のよう。少女たちの葛藤や揺らめきが淡い光の中に映し出される。

 本作で注目したい役者は、麻紀役の梶原阿貴。冷めた口調で学校や他の部員たちを批判する大人っぽい生徒役だ。現在は脚本家で、高橋伴明監督の「夜明けまでバス停で」(2022年)や「『桐島です』」(2025年)などを手掛けた。

 梶原は昨年「爆弾犯の娘」(ブックマン社)を上梓。1971年12月24日、新宿・伊勢丹前の交番が爆破される「クリスマスツリー爆弾事件」が起きた。彼女の父親はその犯行に加わった過激派の1人で、妻と娘と共に逃亡生活を送った。その後、父親は出頭して刑に服するが、彼女は逃亡中や刑務所訪問などの苦しくて奇妙な日々を綴っている。犯人の家族がこのような手記を書くことはとても珍しい。

 やがて梶原は役者を目指し「櫻の園」のオーディションを受ける。その時の様子や撮影時のエピソードが細かく書かれているので、作品ファンには一読をお勧めしたい。

 高校生映画の名作と誉れ高い本作は、特に男性ファンが多いという。それは、女子高とは男性が踏み込めない“園”という思い込みからくるものかもしれない。

稲森浩介(いなもり・こうすけ)
映画解説者。出版社勤務時代は映画雑誌などを編集

デイリー新潮編集部

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