南沙良、原田知世、工藤遥、土屋太鳳…青春がきらめく「悩める高校生」を描いた映画5選【春から初夏への映画案内】
あの時の少女は今
〇「時をかける少女」(1983年)
1980年代の「アイドル映画」の代表作の一つで、原田知世のスクリーンデビュー作だ。
満開の桜が校庭に咲き誇る4月。高校2年生の和子(原田知世)は、理科の実験室でフラスコから立ち昇る煙に包まれ意識を失う。クラスメイトの吾朗(尾美としのり)と一夫(高柳良一)に、それはラベンダーの香りだったと告げる。和子はそれ以来、不思議な現象に襲われるようになった。時空を超える能力を身につけたのだ。
本作が成功した理由の一つは、広島・尾道を舞台にしたことだろう。クラシカルな街並みは、詩情あふれる物語と相性がいい。「転校生」(1982年)、「さびしんぼう」(1985年)と合わせて大林宣彦監督の「尾道三部作」と呼ばれ、ロケ地には多くのファンが訪れた。
原田は、この後も「天国にいちばん近い島」(1984年)、「早春物語」(1985年)、「私をスキーに連れてって」(1987年)と立て続けに主演し、バブル期へ向かう日本映画界を疾走する。
同じ角川映画の薬師丸ひろ子がしっかりした優等生的ヒロインだったのに対し、原田知世は少し頼りなげで、はかなさを感じさせるイメージだった。ファンからすると「守ってあげたくなる少女像」だろうか。
昨年原田は、読み書きができない夫(笑福亭鶴瓶)が妻にラブレターを書くという、「35年目のラブレター」に妻役で出演した。これを観るとかつての透明感のある少女が、とても素敵な女性に成長したことがわかり何とも感慨深い。
デビューから43年、ファンは今でも原田を追いかけていることだろう。
ひたむきな同級生
〇「のぼる小寺さん」(2020年)
高校に入学したのはいいが、どこかやる気がでない。でも一つの出会いから新しい世界が見えてくることもある。
新入生の近藤(伊藤健太郎)は、何となく入部した卓球部で目標のない日々を過ごしていた。5月のある日、同級生の小寺(工藤遥)がボルダリングをする姿を見かけ、そのあまりにも真剣な姿に見入ってしまう。
近藤以外にも、不登校気味の女子生徒や周りに馴染めない髪の長い男子生徒、カメラ雑誌に投稿している女子生徒などが、小寺を見ているうちに自分自身を見つめ直し、新たな目標を持つようになる。
小寺は進路調査票の第一志望に「クライマー」と真面目に書き、教師にあきれられる。でも、校庭の隅に放置された花壇に水をやる、誰にでも親切に接する裏表がないまっすぐな性格。どこか間違えば、いじめの対象になるかもしれないと心配するほどひたむきな人なのだ。
ひたすらボルダリングに打ち込む生徒を演じるのは、モーニング娘。出身の工藤遥だ。2018年から俳優に軸足を置き、本作が初主演映画だった。ボルダリングはまったくの初心者で、3カ月の特訓をし、ほとんどスタント無しで取り組んだという。小寺自身の心の内が語られることはなく、クライミングウォールを登る姿と表情で「小寺さん」というキャラクターを演じている。
そういえば、高校時代に小寺さんのような人がいたような気がする――そんな懐かしい気持ちになる清々しい作品だ。
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