『プラダを着た悪魔2』新キャラは本当に“アジア人差別”なのか…観たからわかる「40秒炎上」で見落とされたこと

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だれも見ていない本編

 というのも、クリップ映像公開のタイミングでは、批評家筋はおろかキャストも含め、本編の完成版を観ることができていなかったのだ。全世界的にお披露目となったのは、日本時間20日にNYで行われたワールドプレミアで、これ以降、ようやく関係者試写が数回行われている。つまり大前提として、クリップを批判しているのは、本編を観ていない者ということになる。切り取られた数十秒のクリップで差別表現が否かを判断できるのだろうか? この点に配慮した抑制的なコメントも一部確認できるのだが、なにせ大炎上なので、そうした声はほぼ無視されてしまっている。

 スタジオや製作陣、キャスト、公開前に本編を見た関係者が「沈黙」しなければいいと思うかもしれない。だがそこにも理由があって、彼らは「切り取られた印象へ発言することで、多くのファンから鑑賞の楽しみを奪うことは間違っている」と考えているのだ。(そもそもこういった大作では、情報解禁前に内容についての発信が固く禁じられている)。

 では、そもそもこのクリップのシーンはどういったシーンだったのかを、以下で説明したい。(ここから少々のネタバレがあるため、未見の方は要注意!)

以下、《ネタバレ注意!》

 本作のあらすじは、ランウェイ誌編集長ミランダ(メリル・ストリープ)のアシスタント職を去って20年、報道記者となったアンディが、窮地に陥ったミランダを救うため、ふたたび彼女の下に現れる……というものだ。そしてアンディのもとに現れたのがジン・チャオだ。

 元アシスタントであるアンディは、誰であろうと「自分にアシスタントが就くこと」には躊躇がある。そんな彼女をみたジンは、アンディが自分以外のアシスタントを欲しがっているのではないかと誤解する。

 そこで出てくるのが、"ステレオタイプ"と批判をまねくことになった超早口のジンのセリフ「イェール大でGPA(平均成績。3.0以上で上位3割といわれる)は3.86、ACTスコア(American College Testing。標準学力テスト。満点は36)は初回で36で……」だった。

 特集編集者のアシスタントに自分が最適だということを、桁外れに賢いことでアピールした「あえて」の表現なのだ。

 この、あえての空回り系キャラ・ジンは、「過剰に気を遣う」「SNS的なふるまい」をする現代的な若者像であり、アジア人ではなく「Z世代のデフォルメ」である……と米・エンタメ媒体「ハリウッド・レポーター」は分析。また、ファッションについては深い教養、興味をもっていることも作中で明かされており、「非常にクチュール的」とも評価している。

 映画をすべて見終わるころには、制作陣にアジア人差別の意識はなく、彼女がファッショナブルで努力家の女性であることがわかるはず。

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