達成も未遂も紙一重…ノーヒットノーランを分けた“ヒヤリの瞬間”
ノーヒットノーランは、ほんのわずかなズレで結末が変わる記録である。日本ハム・細野晴希が3月31日のロッテ戦で達成した一戦も、最終回にはいくつもの分岐点が潜んでいた。わずかなズレひとつで、“未遂”に終わっていても不思議ではない内容だった。【久保田龍雄/ライター】
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落合が落球していたら…
実際、その最終回にはヒヤリとさせられるシーンが続いた。先頭打者・岡大海の強烈なピッチャー返しは、細野がかろうじてグラブに当てて二ゴロ。2死後、山口航輝の一、二塁間のゴロも、ファースト・清宮幸太郎が捕り損ね、エラー判定に救われた。最後の打者・藤原恭大の見逃し三振も、「ボールでは?」とロッテファンの間で疑問視されるなど、いずれも一歩間違えば“ノーノー未遂”になりかねない場面だった。そして、過去に達成されたノーヒットノーランも、同様のエピソードが多く語り継がれている。
1994年5月18日、巨人・槙原寛己が広島戦で達成した史上15人目、平成で唯一の完全試合も、裏話に事欠かない。まず、9回2死、最後の打者・御船英之が一邪飛を打ち上げたシーンから紹介しよう。
ファースト・落合博満が体勢を崩しながらも一塁ベンチ前で好捕し、完全試合が成立したが、「もし落球していたら、どうなっていたか?」という素朴な疑問もあった。当時セ・リーグの審判だった田中俊幸氏は自著「プロ野球 審判だからわかること」(草思社)の中で、パーフェクト達成後、落合と話す機会があったときに、「ファイトある好プレーでしたが、もし落とせばエラーがつき、完全試合は“準完全試合”になるから、記録を優先すれば無理に追うのは考えものだ」と忠告した話を紹介している。
エラーは、野球規則9.12(a)(1)で、「打者の打撃時間を延ばしたり、アウトになるはずの走者(打者走者を含む)を生かしたり、走者に1個以上の進塁を許すようなミスプレイ(たとえばファンブル、落球、悪送球)をした野手に、失策を記録する」と定義されている。
ファウルフライ落球も「打者の打撃時間を延ばした」に該当するが、エラーかどうかは記録員が判断するので、あったとしてもレアなケースと思われる。また、完全試合は投手の記録なので、仮にファウルフライ落球にエラーが記録されても、現在では成立する可能性が強いとみられている。いずれにしても、現実に落合が捕球している以上、机上の空論としか言いようがない。
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