菅田将暉&有村架純、橋本愛&中川大志、染谷将太…ほろ苦さと情熱をもう一度味わえる「新社会人の映画」5選
就職と生きづらさ
〇「早乙女カナコの場合は」(2025年)
卒業・就職を期に別れた2人。その10年に及ぶ関係を描く。
早乙女カナコ(橋本愛)は、大学の演劇サークルに入部する。そこで脚本家志望の長津田啓士(中川大志)と出会い、付き合い始めた。3年後、長津田は脚本を書くために卒業しないと言い出す。2人は喧嘩して別れるが、カナコは大手出版社に内定が決まった。
カナコの研修中の仕事が描かれる。営業部では先輩と書店回りで教育され、サイン会では作家のお相手を務めるのだ。作家をのんが演じていて、「あまちゃん」コンビの共演が実現している。
カナコは出版社の先輩・吉沢洋一(中村蒼)から好意を寄せられる。長津田と比べれば「ハイスペック」な吉沢。でも付き合うことに躊躇してしまうのは、心の隅に長津田のことがあるからだ。
一度も脚本を書き上げたことのない長津田は、「俺は卒業できないんじゃなくて卒業しないんだ」と、モラトリアムのような言葉を嘯く。
橋本は公開時にこの作品を、現代を洞察した言葉で語っている。「長津田が男社会が怖かったというシーンは、男性の生きづらさを露呈している」。そして「男性の男らしさからの解放も、フェミニズムが目指すものの一つ」だと(「週刊文春CINEMA」2025年春号)。
働き方の多様性や価値観の変化が認められるようになった現在、長津田の生き方は決してモラトリアムとは言えないのかもしれない。
天職に出会う
〇「WOOD JOB!(ウッジョブ) 神去なあなあ日常」(2014年)
将来を何も考えていなかった若者が、偶然出会った職業に生涯を賭懸けてもいいと思う成長譚だ。
大学受験に失敗し、やる気がない平野勇気(染谷将太)は、林業研修パンフレットの表紙美女(長澤まさみ)につられ参加することに。訪れたのは携帯電話も通じない田舎の神去村だ。そこには凶暴で野生的な先輩(伊藤英明)がいて徹底的にしごかれる。川に落ちてヒルに吸いつかれるなど、想像を絶する現場の過酷さに耐えられず脱走を試みるが……。
大木をチェーンソーで切り、倒れる瞬間は感動的でさえある。森の空気や木の匂いなどが漂ってくるようだ。この作業を見つめる勇気の顔つきも、徐々に変わってくる。
やがて1年間の研修を終えて帰宅する勇気だか、偶然木の匂いを嗅いだことで神去村に引き返す。天職に出会ったことに気づいた瞬間だ。
矢口史靖監督は、撮影前の取材中に携帯電話をトイレに水没させたり、車にはねられた鹿の死体を見かけたり、股間をマダニに刺されたりしたという。それらの実体験が映画に生かされているのでぜひ注目してほしい。
染谷はオーディションで選ばれた。矢口監督はこれまで染谷の作品を観たことがなかったのだか、その場で決定したという。「笑うと、赤ちゃんみたいな顔になって、可愛いんですよ。でも、何か考えてるぞ、と思わせる部分もあって」。その染谷は試写を観て「あんな、笑い顔するんだ、俺。初めて見た」と語っている(「キネマ旬報」2014年3月下旬号)。
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