「勝負あり!」は早合点だった…8点差、9点差、10点差を覆したプロ野球“衝撃の逆転劇”
金本監督も「まさか逆転するとは」
前出の西武を上回る9点差逆転劇を演じたのが、2017年の阪神だ。5月6日の広島戦、阪神はプロ初先発のルーキー・福永春吾が立ち上がりから制球を乱し、4回6失点で降板。5回表までに0対9とリードを広げられた。
その裏、梅野隆太郎のタイムリーが飛び出すも、原口文仁が遊ゴロ併殺打に倒れ、1点止まり。「今日は負けや!」とあきらめて帰ったファンもいたかもしれない。ところが、1対9の6回から流れは一変する。2死満塁から鳥谷敬の一塁内野安打で1点を返したことが始まりだった。
直後、3連続押し出し四球で5対9とすると、高山俊の満塁走者一掃の右越え三塁打が飛び出し、一気に1点差。1イニング7得点の猛攻で火がついた猛虎打線は、7回にも1死一、二塁から鳥谷の二ゴロを西川龍馬が大きくはじく間に、二塁走者・江越大賀が本塁を突く。判定はセーフだったが、リプレー検証でアウトに覆った。
だが、この“幻の同点”が虎戦士を一層奮い立たせる。なおも2死一、二塁で、糸原健斗が右前に同点タイムリー。梅野も右越え三塁打で続き、ついに11対9と逆転に成功した。終わってみれば、球団史上初の9点差をひっくり返して12対9の勝利。広島をかわして単独首位に躍り出るという最高の結果となった。
金本知憲監督も「最初はお客さんに申し訳ない気持ちで一杯だったが、まさか逆転するとは」と驚きを隠せなかった。9点差の逆転は、2003年の日本ハム、セ・リーグでは1995年の中日以来の珍事だった。
最後までベストを尽くす
だが、世の中には上には上がある。史上最大の10点差をひっくり返したのが、1997年の近鉄だ。8月24日のロッテ戦、投手陣の乱調で1、2回に5点ずつを失い、序盤で0対10とリードされた。
右翼席の私設応援団も「2回で10点はプロ対アマでもなかなかない」と呆れ、鳴り物応援をボイコット。そんな異様な雰囲気のなか、近鉄は3回に村上嵩幸、4回にクラークのソロで2対10とじわじわ反撃する。5回にも水口栄二、鈴木貴久のタイムリーなどで4点を返し、逆転も夢ではなくなった。
7回にも大石大二郎のタイムリーなどで3点を返してついに1点差。右翼席の“応援復活”に士気も上がり、9回には鈴木の代走・武藤幸司の三盗が悪送球を誘発し、“足攻”で同点に追いつく。そして延長12回2死満塁、クラークが中堅手の頭上を越える一打を放ち、代走に起用された投手・入来智がサヨナラのホームを踏んだ。
10点差からの大逆転は、1949年の太陽、1951年の松竹に次いで史上3度目の奇跡(その後、2017年にヤクルトも記録)。近鉄・佐々木恭介監督は9対10となった時点で敗戦コメントを考えていたというが、予想外の劇的勝利に「このナインと野球ができることがうれしい」と大喜びだった。
筆者自身も昨秋、東都大学野球3部リーグで、大正大に15対1とリードされた成蹊大が8回に打者15人の猛攻で11点を返す場面を目の当たりにした。逆転こそならなかったが、全員でつないでいく姿に胸を熱くしたことを覚えている。大量リードでもあきらめず、最後までベストを尽くす……。これも野球の醍醐味と言えるだろう。











