「地獄が降りかかる」…イランを容赦なく脅す“トランプ大統領”を生んだアメリカの闇…「有事になると熱狂した大衆がひとつの論調にまとまる」「自由の国とは考えないほうがいい」
アメリカのトランプ大統領が、現在イスラエルと共に攻撃を続けるイランに対し、連日脅迫的に降伏を迫っている。私はこうした報に触れるたびに、アメリカという国の恐ろしさに思いが至ってしまう。広島への原爆投下と戦後社会をテーマとする名作『はだしのゲン』では、アメリカ人の傍若無人な様子が生々しく描かれていたが、今の第二次トランプ政権の振る舞いは、まさにあの漫画に登場するアメリカ人とよく似ている。【中川淳一郎・ネットニュース編集者】
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なぜトランプは逮捕されないのか
第一次政権時のトランプ氏は、現在と同じく強引なやり口や、SNSへの尖った投稿で世界中をあたふたさせることこそあったものの、ここまで他国に対する攻撃に執着していなかった。「他の国のことは知らん。アメリカファースト! Make America Great Again!」と主張する、少し口が悪いお爺ちゃんだった。また、北朝鮮の金正恩総書記と直接会談するなど、どちらかといえば大規模戦争を避ける方向で動いていたようにも見え、今と比べればだが、平和路線ではあったように思う。
しかし、第二次政権ではガラッとその路線を変更。関税増をチラつかせては世界中の株価に影響を与え、ベネズエラの大統領を拘束したかと思えば、容赦なくイランにミサイルを打ち込む。攻撃だけではなく、“口撃”も一層激しくなり、「ホルムズ海峡封鎖をやめない場合は発電所等を破壊する」と宣言。実際はその期限を延ばし、ネットでは、「TACO(Trump Always Chickens Out=トランプはいつもビビって止める)」などと揶揄もされているが、いずれにしても、こうした強い発言を繰り返す。
ここでふと不思議に思うことがある。なぜトランプ氏は責任を追及されないのだろうか、ということだ。トランプ氏の一連の行動の結果、株で大損した投資家や時価総額が大暴落した企業、原材料の調達困難により負担を強いられる企業は、なぜ彼を訴えないのか? アメリカの大統領という強い立場であれば、いくら他国を攻撃し、恐喝し、迷惑をかけても許されるということなのか。
無論、法的・政治的に強固な防壁(免責特権)があるからこそ、トランプ氏はここまで強気に出られるわけだし、国家元首を訴えるのはほぼ無理であることは理解している。だが、私が何より恐れるのは、アメリカという国の大衆が一つの方向に向かって熱狂する姿である。私が具体的に思い浮かべることができるのは、1990年の8月に勃発した湾岸戦争(クウェートを助ける多国籍軍vsイラク)と、2001年の米同時多発テロの時のアメリカの空気感だ。
アメリカには正義しかない
湾岸戦争においては、「ナイラ証言」が有名だ。1990年10月、米議会の人権委員会で、「ナイラ」と名乗る15歳のクウェート人とされる少女が、イラク軍の兵士がクウェートの病院で、保育器に入った新生児を取り出し放置して死に至らせたと証言した。これにより米国内、そして世界中でイラクの残虐性とアメリカによる攻撃の正当性が強調されることとなる。だが、実際はナイラは在米クウェート大使の娘で、この証言はでっち上げだった。
「油まみれの水鳥」という写真もあった。原油にまみれて真っ黒になった鳥の写真で、この一枚をきっかけにイラクのフセイン大統領(当時)が、原油を大量に海に流し環境汚染を巻き起こしている、といったイメージが醸成され世界中で広がった。後に複数のメディアや研究者が、「米軍の爆撃による流出であった可能性や、写真の信憑性に疑問を呈した」といった見方も出た。
いずれにせよ当時のアメリカは、「フセインとイラクは邪悪な存在でアメリカには正義しかない」という論調一色で染まっていた。私はその頃アメリカに住んでいたのだが、テレビのニュースは連日その論調で報道し、人々はしきりとその論を主張した。
さらには、プロレスでもそのプロパガンダは存分に発揮された。当時、「フセインに魂を売った男」として、サージェント・スローターという悪役レスラーがWWF(現WWE)で大暴れし、アラブ系のアイアン・シークをセコンドに伴って、イラクを称賛し続けた。
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