フジテレビもついに撤退! 「とくダネ!」小倉さんはワイドショーの現状をどう見ていたのか

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 3月27日、フジテレビの朝の情報番組「サン!シャイン」が終了した。「小川宏ショー」から始まる同局の60年以上にわたる朝の情報番組の歴史の幕が閉じたわけだ。

 またこれにより、ニュース、時事問題をメインで扱う朝8時台の民放番組、いわゆる昔ながらの「ワイドショー」は、テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー(以下、モーニングショー)」のみになった。

「サン!シャイン」の終了はワイドショーの衰退を感じさせる出来事だが、つい最近まで民放各局の8時台といえばワイドショー、があたりまえだった。

 10年ほど前のテレビ番組表を見れば日本テレビ「スッキリ!!」、TBS「白熱ライブ・ビビット」、フジテレビ「とくダネ!」、テレビ朝日「モーニングショー」と8時台に始まるワイドショーのタイトルが並んでいる。しかし視聴率や編成の問題から次々模様替えや終了を余儀なくされ、今や唯一の生存者が「モーニングショー」というわけだ。

 同番組の人気は高く、司会の羽鳥氏やコメンテイターの玉川徹氏の発言は毎日のようにネットニュースで取り上げられている。玉川氏の場合はしばしば「炎上」も話題になるが、これも人気の裏返しだろう。

 結果として「サン!シャイン」も前身の「めざまし8」も、「モーニングショー」には勝てなかったわけだが、もともとこの時間帯、フジテレビが王者だった時代もあった。

「めざまし8」の前身番組、「情報プレゼンター とくダネ!」は1999年4月1日から2021年3月26日まで実に22年、全5646回にわたって放送された同局の看板番組にして長寿番組である。

 司会は小倉智昭氏。番組の名物は、オープニングでの小倉氏のフリートークだった。

 2024年末に他界した小倉氏は、晩年、番組の共演者であり友人でもある作家・社会学者の古市憲寿氏を聞き手に1冊の本を遺している『本音』というタイトルのこの本の中で小倉氏は、自身の生涯や人生観、そしてテレビ論を語っている。その言葉の数々は、さすがの鋭さや重みを感じさせるものばかりだ。

 衰退しつつあるテレビ、ワイドショーについての小倉氏らしい率直な言葉に耳を傾けてみよう(以下、『本音』より抜粋。聞き手は古市氏)。

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窮屈になってきたという実感

──昔と今でコンプライアンスとかに対する意識も変わってきましたが、「とくダネ!」をやってる間も言えないことが増えてきたなって感覚はありましたか。

 ある、ある。それについては、この先、どうするんだろうって思うよね。だって報道の自由だとか言論の自由とかがある一方で、「報道機関」の立場になってしまうと規制が多すぎて、自分たちが規制しているんだもんね。

──ネットでは過激な言葉が飛び交う一方、メディア側の自己規制はどんどん強まっているように感じます。

 うん。普段使える言葉すら使えなくなってきているわけでしょ。例えば魚屋、肉屋、八百屋といった言葉を差別だと思う? 普通は思わないでしょう。でも今は肉屋ではなくて、精肉店、お肉屋さんと言わなきゃ駄目なんだ。

 百姓はお百姓さんって言わなきゃ駄目。それもあんまり使ってほしくないっていう感じでしょ。

 そういう言葉が余りにも多すぎて、落語ですら変わってきてるもんね。それでも落語はお金を払って高座を聞きに行くんだから、お客のほうで取捨選択できるので許される面もあります。テレビとは違う。それでも昔使われていた言葉を自由に使える状況ではなくなっているでしょ。

──そういう時代に情報番組は生き残るのか。生き残る必要があるのか。どうなんでしょうね。

 僕は必要だと思う。報道番組といわゆる情報番組って似て非なるところがあるから、残っていかないといけないと思っています。報道番組が新聞ならば、情報番組は週刊誌みたいなものに近い。(略)

 今は情報過多になっちゃってるでしょう。情報番組をやっていても、視聴者が何でもネットで知っているから、極端に言えば、番組で伝えるべき新しい情報というものがもうないんだよね。それもあって、朝の情報番組も横並びでみんな同じことをやっていたのに、今はみんなバラバラになってるじゃないですか。いわゆる情報番組らしいものをやってるのって、今、フジとテレ朝ぐらいでしょ。TBSも日テレも変わりました。

 また、コメンテイターの幅がものすごく広くなったのも大きな変化ですね。僕が「とくダネ!」を始めた頃には、アイドルグループ出身の女性がコメンテイターとして出演して、政治とか国際問題について話すなんてことは考えられなかったでしょう。そういうテーマは司会をやっている僕だって、ちょっと荷が重いなって感じるのに、それについて話をするというのは大した度胸だと思うよね。もちろん真面目に勉強してる子もいるし、立派な大学出てる子もいるんだろうけど、昔は使う側もそんな勇気はなかったからね。やはり肩書のある人に語ってもらっていた。

 ややこしいテーマの時には、専門家を必ず入れていたもんです。

──今でも専門家は呼んでいますよね。

 しかし今はどの番組もスタジオに専門家を呼んでいるのに、横にパネルを置く。本人がその場にいるのに、本人の顔写真の付いたボードで、「○×先生はこう言っています」ってやるんです。馬鹿じゃないのって思うわけよ。でも「とくダネ!」も後半はそれをやっていたからね。

 僕はおかしいと思っていたから、本当にうるさく言っていたんです。「何でそこに本人がいるのに、本人に聞かないでパネルで説明するんだ」って。

 すると、「いや、そこで聞くと話が長くなっちゃうんですよね。だから、こっちにまとめてるんです」って。それじゃ、そもそも呼んで話を聞く必要ないだろう、と思うんだけど。

 コメンテイターというのはこれからどうなるんだろうね。アメリカのニュースショーとかを見ていても、日本のコメンテイターみたいな人はいませんね。何でもかんでもコメントする人がこんなに出ているのは珍しい。(略)

──今でもテレビはよく見ますか。たとえば朝8時台の情報番組とか。

 見ますよ、わりあい偏ってきちゃいましたけどね。羽鳥慎一さんの「モーニングショー」(テレビ朝日)を見ることが多いかな。一つのことをわりあい徹底してやるんですよ。コメンテイターの長嶋一茂さんは、くだらないことも言うんだけど、くだらないなりに一生懸命頑張って言っているから、あれはあれで面白いかなって思う。玉川徹さんも頑張ってると思いますし。

 テレビ朝日が面白いのは、朝8時からお昼の大下容子さんの「ワイド!スクランブル」まで、扱うニュースの本筋があんまりかぶらないんですよね。大下さんのところは結構、国際問題をやる。今だとウクライナ問題だとか中国問題とかを、1時間ぐらいかけてやるんですよ。あの辺の全体の流れが結構、面白いですね。

 逆に、番組全体の流れを考えてないのがフジテレビ。今や何を言いたいのかわからない、バラバラ。何だかよくわからない、お昼過ぎの「ぽかぽか」っていうのも。

 しかし、どうなんだろうね。朝に情報番組をやるというのが一種の慣習というか常識になっていたんだけど、もう普通の情報番組は駄目なのかも、という気がすることもあります。

 何たって今や大谷翔平選手が多くの国民の関心の的でしょう。だいたい僕も大谷選手の試合が始まると、「モーニングショー」も見なくなるものね。
面白いんですよね、やっぱり。熱狂的なライオンズファンだった僕が、ライオンズ戦を見なくなっているくらい。新聞で結果だけ知って、ひでえなあとかボヤくぐらい。

──若いキャスターやアナウンサーでうまいな、と感心した人はいますか。

 最近の人では、TBSのニュースでホラン千秋さんが出てきた時には、「うまくいけば伸びそうだ」と思いました。すごく勉強をしていることが伝わってきましたから。今ちょっと足踏みしている感じもしないでもないけど。(※注・2025年3月にキャスターを卒業)

 ライバル視するような人はいないけど、さっき言った羽鳥君なんかは安定感がありますよね。回し方とか、とっさの言葉遣いとかがうまいですよ。いろんなことをよく知っているし。日頃の鍛錬なんじゃないかな。

 TBSの安住(紳一郎)君は達者な人だなと思うけど、今の朝の番組をやってるのはもったいないですね。あの番組だと彼が生きないよね。彼はニュースとか情報番組っていうより、やっぱりソフトなバラエティ番組の回し役とかをやったほうがうまいかもわからないですね。それは非常にうまいですよね。

 何に向いてるかっていうのは、やっぱり違うでしょ、人によってね。アナウンサーでうまい人というのは、とっさのごまかし方がうまいんですよ。古館伊知郎さんなんかもそうです。うまく逃げることもできるし、まとめ方もうまい。言葉で彼はバッと局面を変えていくことができるんだけど、あれはいくつも言葉を引き出しの中に持っていないとできない。台本があるわけじゃないから。

──それは小倉さんもできていたんじゃないですか。僕の中で古館さんは、一人で2時間でも3時間でもよどみなく話しているイメージ。一方の小倉さんは、一人しゃべりもできるけど、常に対話相手やオーディエンスがいるイメージです。自分ではどこが弱点だと思っていたんですか。

 ずっとお話ししているように、若い頃、勉強や受験勉強をしてなかったことです。みんなが一生懸命勉強しているときに、僕は勉強しないで遊んでばっかり。自分の好きなことばっかりやってたじゃないですか。だから、いわゆる一般教養みたいなのは弱かったんですよ。それをどうやってごまかすのかっていうのが、僕のある意味での哲学だったかもわからない。

 それでも「とくダネ!」をやっていくうちに、だいぶ引き出しは増えてきましたね。弱点は減ってきた。

 そのへんを踏まえて僕がよく言うのは、「テレビを見るとバカになる」「1億総白痴化」とかってよく言われるけど、そうは限らないでしょう、ってこと。うちの家はテレビ好きだったんですよね。小さいときからテレビを一生懸命見ていたけど、それはそれで役に立っていますよね。教養とか知識も教わった面があります。もちろん好きなものだけ見ちゃうと、問題はあるかもわかんないけど。

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 本の終盤、「また自分の番組を持ちたいですか?」と古市氏に問われた小倉氏はこう答えている。

「同世代の人が心から共感できたり、面白がったりできる番組をやれたらなあ、ってすごく思う。そういうものを面白くやれる自信はあるんですよ」

 朝のワイドショーが絶滅危惧種となった今、小倉氏の少し毒気のある熟練のトークをもう一度聞いてみたかった、という視聴者も少なくないのではないか。

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