今回で4度目「タイガー・ウッズ」が繰り返す“交通事故” 「薬物依存」疑惑を“グレーのまま”にした周囲とメディアの責任

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自身での運転は日常的だった

 SNSなどを中心に方々から聞こえてくるのは、なぜウッズほどのセレブリティが、専属ドライバーを雇わず、自らハンドルを握っていたのかという疑問の声だ。

 過去に3度も交通事故を起こし、とりわけ3度目は瀕死の重傷を負ったというのに、それでもウッズがハンドルを握り続けるのは、なぜなのかという声も上がっている。

 その「なぜ?」の答えは、ウッズの胸の中だが、1つ言えることは、ウッズは昔から車の運転が大好きで、自分の思い通りに自由に行動できることも好んでおり、試合の際の往復はほぼ毎回、ウッズ自身の運転だったという事実だ。

 試合の日の朝、試合前のウッズの言葉や姿を捉えようとする記者とカメラマンが選手用駐車場で待ち構えていると、ウッズ自身が運転する車がやってきて、現場に緊張が走る。かつてのPGAツアーでは、そんな場面が日常的に見られていた。

 しかし、ウッズがどんなに運転好きだとしても、交通事故を何度も起こし、2009年当時から薬物依存の兆候や症状が見られたのは事実なのだから、どこかの時点で誰かがウッズの運転を止めることはできなかったのか。そう考えると、残念でならない。

メディアはなぜ追求できなかったのか

 会見等でウッズと直に言葉を交わすことができるメディアは、なぜウッズの薬物依存や薬物使用に関することを、もっと追及しなかったのかという声も聞こえてくる。

 だが、米メディアを中心とする記者陣は、交通事故の騒動後にウッズが姿を現すたびに、会見で質疑応答を試みてきた。

 しかし、たとえば2017年の交通事故後、ウッズが初めて臨んだ会見では、血液検査が行われなかったことを問われ、「すべてはポリス・レポートにある。それを読んでくれ」とだけ返答。会見の進行役によって事故関連の質問は打ち切られてしまった。

 1人の記者が無理にでも質問を続けることで、会見自体が打ち切られ、他の記者に迷惑をかけることになる。そうしたリスクなどを考えると、会見の場でメディアがどこまでも真実を追及することは、なかなか難しかった。少なくとも、これまでのウッズの会見は、そんな状態だった。

 だが、たとえ会見がその場で打ち切られるとしても、それを覚悟の上で、もっと追及するべきだったのだと、私自身も今は思う。

 2009年と2021年の交通事故の際も、薬物使用が疑われる状況だったにもかかわらず、最終的にDUIに問われなかったことも、謎のままにされるべきではなかったのだろうと、あらためて思う。

 いろいろなことがグレーなまま、見て見ぬふりをされてきたように思えてならない。

「治療に専念」できる環境づくりを

 ロイター通信によると、今回の事故後、ウッズ側は2017年当時と同じ腕利き弁護士のダグラス・ダンカン氏を早々に雇い、DUIに関しては無罪を主張しているという。

 司法の判断は専門家にお任せするしかないが、PGAツアーやスポンサー企業など周囲の人々にできることがあるとすれば、「治療に専念する」と宣言したウッズが健やかな心身を取り戻すまでは、彼をゴルフやゴルフ関連ビジネスの場から、あえて遠ざけることではないだろうか。

 折しもPGAツアーは2027年に向けた大改革プロジェクトを検討中で、ウッズはそのために創設されたFCC(未来競技委員会)のチェアマンに任命されている。

 だが、ウッズにはしばらくの間、その職からも離れてもらい、「治療に専念」していただくことが、今考えられる最善の道であろう。

 ウッズは、来たるマスターズには出場しない意思を示し、2027年ライダーカップの米国キャプテンを務めるチャンスもすでに辞退した。そして、「米国外で緊急に集中治療を受けたい」という申請を行い、裁判所から許可を得た。

 まずは良き方向に進みつつあるのだと思いたい。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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