公権力とメディアが“情報操作” これまでにない「令和の警察ドラマ」の見応えがハンパない

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 東京の治安と都民の安全を守るために、熱い正義感と清い倫理観をもって……という警察モノではない。舞台は警視庁広報課。上意下達の人間関係と組織の論理に振り回され、担当部署間の調整だけでなく、敏(さと)いオールドメディアとの駆け引きに奔走。国民の「知る権利」を重んじるテイで、世論をうまく誘導するのも仕事の一つ。見ているだけで胃が痛むようなこの部署を主軸に描くのが「東京P.D.警視庁広報2係」である。

 警察官の犯罪隠蔽(いんぺい)、実名報道の是非、報道協定に加害者家族への対応、警視庁上層部と政治家の癒着など、硬派かつ密度の濃い展開は、単純明快な勧善懲悪を求める人には合わない。毎回まるく収まるように見えて、よく考えるとなんか腑に落ちない結末には後味の悪さも。でも、だからこそいい。

 過去の警察・刑事ドラマを雑に分類すると、昭和は「熱血or破天荒変人の勧善懲悪ド定番」、平成は「警察内部の内輪もめと隠蔽体質」がはやりだったような。この昭和みと平成みを盛りつつ、メディアの信用失墜や、匿名ネット民の良心なき暴挙という令和風味も添えて、広報課という絶妙に無力な立場の視点で描く。

 主人公・今泉麟太郎(福士蒼汰)は捜査一課の刑事に憧れるも、配属されたのは警視庁広報課2係。記者クラブの存在もサンズイの隠語も知らないってのはどうかと思うが、刑事としての勘やセンスはある設定だ。

 今泉はまさに昭和テイストだが、広報の知られざる複雑怪奇な職務内容と自ら動けない立場に日々切歯扼腕。それでも2係の面々のアシストもあって、徐々になじんでいく役どころだ。

 今泉に仕事を教える熊崎心音(吉川 愛)、今泉の暴走を心配する水野和香(太田莉菜)、幹部の息子で現場経験もないまま本庁に勤務する玉田宏樹(谷原七音〈ななと〉)の他、元二課のエリートだったが女性問題で広報にきた時永修次(竹財輝之助)や、記者にしれっと情報を漏洩(ろうえい)して、警察が介入しにくい案件を表沙汰にする手練れの下地和哉(正名僕蔵)など曲者多し。そんな広報課の課長はキャリアで出世以外によすがのない真部正敏(本多 力)。

 もう一人、元一課の刑事だが、後輩(草川拓弥)が亡くなった未解決事件に悔恨がある安藤直司(なおし/緒形直人)がいる。軽薄なおじさんを装うも、今泉の直情径行っぷりを陰でひそかに支えている。もう一人の主役だ。

 捜査一課は熱血&剛腕、二課は頭脳派&忍耐力、犬猿の仲で描きつつ、悪いのは全部上層部とするあたりは平成風味ね。で、ちょいと違和感を覚えたのは、民放局の一課担当記者・稲田裕司(金子ノブアキ)。目敏く正しく鋭過ぎやしないか。テレビ局ほど長いモノに巻かれる現状とはかけ離れとる。いやこれはむしろ常日頃抱える報道のジレンマを理想形で昇華したのかな。

 このドラマで最もゾッとする言葉は「情報操作」。公権力とメディアのずぶずぶタッグはまさに令和の象徴だ。よろしくない象徴ね。

 ということで、昭和・平成・令和の澱を凝縮した警察ドラマは見応えがあって、記憶に残る作品になった。

吉田 潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2026年4月2日号掲載

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