なぜ今の視聴者は「怒るMC」を避けるのか? 「羽鳥慎一」と「石井亮次」に共通する“聞く力”
「ミヤネ屋」の牙城崩れる
MCの宮根誠司氏(62)の勇退により日本テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」(平日午後1時55分)が9月末に終わる。このため、午後2時台の情報番組に関心が集まっている。2025年度の個人視聴率争いは関東、関西、名古屋のいずれもTBS系「ゴゴスマ -GO GO!Smile!-」(同)がトップだった。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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【写真を見る】「そりゃ勝つわ」石井アナを支える「ゴゴスマ」の豪華出演陣
名古屋のCBCが制作する「ゴゴスマ」の2025年度の個人視聴率は関東2.3%(世帯4.6%)、関西2.3%(同4.6%)、名古屋2.3%(同4.7%)。大阪の読売テレビが制作する「ミヤネ屋」も関東、関西でともに個人視聴率2.3%を記録し、横並びのトップだった。
「ゴゴスマ」の関東での年度トップは2年連続。関西では初めて。地元の名古屋では3年連続だ。「ミヤネ屋」は「ゴゴスマ」にその牙城を崩されたタイミングで幕を閉じることになる。
放送開始から13年の「ゴゴスマ」と同20年目を迎えた「ミヤネ屋」。長らく「ミヤネ屋」が勝っていたが、どうしてここまで勢力図が変化したのだろう。両番組が変わったのではなく、視聴者心理が変容したのではないか。「ゴゴスマ」の感情をなるべく排したところが時代に合ったと見る。
昭和のワイドショー型情報番組のMCは感情むき出しだった。悲惨な事件を伝えるときには大粒の涙を流し、不当に虐げられる人がいたら、代わりに怒声を上げた。浪花節だった。
もっとも、それが当事者のために役立ったという話は聞いた試しがない。涙や怒りは視聴者向けのもので、まさにショーだった。視聴者にも別に有益ではない。そのことに視聴者は気付いているが、ショーの遺伝子は今も一部の情報番組が引き継いでいる。
「ゴゴスマ」のMC・石井亮次氏(49)はいつも穏やかな顔をしている。語気を荒らげることはない。泣くこともない。子供の不幸を伝えるときにはさすがに表情を崩してしまうが、努めて冷静に情報を伝えている。自分の意見はあまり口にしない。コメンテーターには好きなだけしゃべらせる。
テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」(平日午前8時)のMC・羽鳥慎一氏(55)とタイプが似ているのだ。羽鳥氏も自分の感情は極力抑える。自分の意見はほとんど口にせず、玉川徹氏(63)らコメンテーターの話の聞き役にまわる。
「モーニングショー」は平日午前帯の情報番組で個人視聴率トップ。今の視聴者は感情的なMCは望んでいないのだろう。諸問題のエキスパートとは言えないMCの言葉もさほど期待していない。
「ゴゴスマ」はネタからも感情があまり伝わってこない。実用情報の天気予報を冒頭から20~30分流すこともザラ。政界情報、事件、暮らしに関わる経済情報は詳報するが、「この人が悪い」というような答えはほとんど出さない。コメンテーターらの意見をなるべく多く紹介し、それを基に視聴者が答えを出す形にしている。
「ミヤネ屋」との目立った違いは出演者同士の小競り合いがないこと。一時代を築き上げ、今も人気番組である「ミヤネ屋」には時に舌戦がある。
法律家同士の激しい論争があった。コメンテーターが宮根氏に声を荒らげたこともある。これを面白いと思った人も多かったろうが、敬遠した人もいるのではないか。
他人事とはいえ、衝突を好まない人もいる。「ミヤネ屋」はワイドショー型情報番組の残滓があるようにも思えてしまう。コメンテーターが話すタイミングを宮根氏が決めるところも好みが分かれるのではないか。
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