「私だけファンがおじいちゃんばかり…」 11歳デビューの元アイドルが“ガチ恋ゼロ”“無償の愛”のありがたさに気づくまで

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握手会でも10秒くらいで「もういいよ」

――ただ田中さんはAKB48のシングル総選挙では2017年が50位、2018年は63位とちゃんと票も入っています。ファンの方も熱心に応援してくれた証左ですよね。

田中:だから、逆に怖くて(笑)。なんで私に対して、何の見返りもなくよくこんな金額を使ってくれるんだろうって。総選挙のときにシングルを200枚ぐらい買ってくれた人が握手会で「みかんちゃんも休憩したいと思うから、もういいよ」って言って10秒ぐらいで帰ったりするんですよ。こっちからしたら1秒でも多く感謝を伝えたいじゃないですか。「もうちょっと喋らせて」ってこっちが思っちゃうぐらいでした(笑)。そのくらい、みんなジェントルマンなんです。

――田中さんのファン同士も仲が良いとか。

田中:ファン同士で集まって、30人くらいの宴会をしたり、私がいなくても集まっています。アイドルのファンって、自分だけで応援したいという人も多いじゃないですか。だからファン同士あまり仲良くないことも多いんですけれど、私のファンの中の有志の方が日頃からファン同士で集まる癖をつけようと飲み会を開いていたんです。

 そもそも人と喋るのが苦手だったというファンの方も、今では「みんなで集まるのが好き」と言ってくれていて。飲み会で余ったお釣りはずっと貯めてくれていたみたいで「なつみかんちゃんが、もしやりたいことができた時の交通費にしてあげようと貯めているんだ」と話していました。

14年来、福岡移住のファンも

――ファンの鑑じゃないですか。長い方でどのくらいファンなんですか。

田中:最高齢は74歳で名古屋の方です。福岡はなかなか難しいですけど、関東のイベントには来てくれます。ほかにもご家庭がある方もいて、福岡には家族に「出張」と言って来ているそうです。可愛いですよね(笑)。

 小6から劇場に来てくれている方で、もう14年応援してくださっています。それこそ関東の方なんですが、私が福岡でタレント活動すると決めてから、福岡にセカンドハウスを借りてくれています。私が出ているラジオやテレビは今、福岡でしか見れないので。福岡に移住した方も2人くらいいます。「同じ場所に住んでみたい」「頑張ってる姿を見たい」って。

 そういう話を聞くとより頑張らないと思います。テレビやラジオで結果を残して、ファンの人に見てもらえるようにしようって。

――田中さんは2020年にHKT48を卒業します。アイドルからの卒業という区切りがつくと、徐々にファンが離れていってしまうケースも多いですが、どうでしたか。

田中:アイドルを辞めたら半分ぐらいはいなくなるんだろうなと思ったら、卒業後のイベントでもファンの数は変わらなかったんです。みんな、昔から「劇場公演を見るのも好きだけど、タレントとして活躍するみかんちゃんを見たい」と言ってくれていて。

 だから、アイドルとしての私が好きだったわけじゃなかったんだと気付いて。よく考えたらHKT48時代も劇場公演を見に来る人たちは、歌ったり踊ったりしている私じゃなく、「今日どんなこと話すんだろう」と私のMCを楽しみにして見に来てくれていたんです。

 なんなら、むしろファンの方は卒業後の私について「みかんちゃんが卒業したら、いろいろと面白いことをやってくれる」とすごく信頼してくれていました。昔から自分で何か企画したりするのが好きで、ファンはHKT48から解き放たれた方が、より楽しいことしてくれると思っていたみたいなんです。

 だから私の卒業公演でファンは誰も泣いてなかったんですよ。うちの親めっちゃ泣いてんのに。むしろワクワクして「いつから活動再開しますか」みたいな(笑)。

――田中さんはアイドルというより、人として好かれているし、ファンとお互い信頼し合っている。推し活の理想系ですよね。

田中:アイドル時代は警備の関係で、握手会で横断幕を出すだけでも許可が必要だったり、いろいろと制限もあったんです。運営側としてそれは正しいんですけれど、一方で「私のファンはこんなに素敵な人ばかりで、何もされないぐらい信頼関係があるのにもどかしいな」という思いがあって。なので卒業して、バスツアーやイベントでその頃の思いを実現できる機会が増えています。今が一番楽しいですね。

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記事後編】では「生存確認電話」「安否確認LINE」というユニークすぎるファンクラブ特典の狙いなどについてインタビューしている。

徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。ウェブメディアウォッチャー。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。その後、テレビ局のオウンドメディア編集長を経て、現在はフリーライターとして雑誌、ウェブで記事を執筆している。著書に日本初のグラビアガイドブック「一度は見たい! アイドル&グラビア名作写真集ガイド」(玄光社)。noteでマガジンを連載中 X:@tatsunoritoku

デイリー新潮編集部

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