6度のがん手術、放射線治療… 「坂本龍一さんの死」に医療関係者がショックを隠せなかった理由
放射線治療ががんの発生原因に
がんと遺伝、生活習慣との関係については以前から指摘されてきた。がん治療が多くの患者の命を救ってきたのは紛れもない事実だが、一方で治療が内包するリスクについては、これまで真正面から論じられる機会は少なかったとされる。
岡田氏が続ける。
「坂本さんの詳しい症状や病歴を把握しているわけではないので、あくまで医学的な一般論としての話となりますが、中咽頭がんと直腸がんの間には直接の関連性が薄いとされているため、直腸にできたのは新たながんと考えたほうが自然です。がん細胞をつくる代表的なものとして、紫外線や放射線、一部の抗がん剤がつくり出す“フリーラジカル”と呼ばれる異常分子(活性酸素など)が挙げられます。紫外線が皮膚がんの原因になることはよく知られていますが、検査や治療に用いられる放射線、あるいは化学療法剤なども正常な細胞のDNAを傷つける作用があり、がんの発生原因となり得ます」
そのため治療には細心の注意が払われてきたが、近年は効果が高く副作用も少ない、免疫機能に働く「免疫チェックポイント阻害剤」や、がん細胞の特定分子のみを攻撃する「分子標的薬」を使った治療が主流になってきている。
しかし、すべてのがんに適用できるわけではないことから、放射線治療や従来の抗がん剤も広く使われているのが現実という。
「検査についても無視できない問題が」
腫瘍を摘出する外科手術も免疫力の低下を招くなどのリスクは避けられず、そのため治療後のケアが非常に重要だという。
「治療とセットで行われる検査についても、無視できない問題があります。たとえば、“すべてのがんの約4.4%はエックス線検査が原因”である可能性を指摘する研究論文や、CT検査を複数回受けることで“がんになる確率が最大12%増加”することを示唆した論文も存在します」(岡田氏)
たび重なるがん治療が“新たながんを生む”というリスクやジレンマの存在を医療関係者だけでなく、患者の側も知っておく必要があるという。
坂本さんの訃報に接し、一流の医師による懸命の治療が叶わなかった点について「どうして?」との声も聞かれるが、医療が進歩してなお、乗り越えるべき壁は存在したままだ。「がんとともに生きる」という坂本さんの言葉は“がん克服”を目指す医療界にも重い課題を突き付けている。
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