周囲のイエスマン化でトランプ氏は「裸の王様」か…イラン泥沼化も反省ナシ、権力集中で「米国の民主主義」は悪化の一途
地上部隊の投入も支持は低く
戦費の拡大も懸念事項だ。
イラン攻撃の戦費は攻撃開始後1週間で110億ドルを超えた。ワシントン・ポストは18日、国防総省がイラン攻撃の戦費として連邦議会に要請する2000億ドル(約32兆円)以上の追加予算案をホワイトハウスに提案したと報じた。
追加予算の目的はこれまでの交戦で使用した重要な兵器の増産だが、ホワイトハウスは議会で承認されないとみている。民主党が反発しているからだ。
地上部隊の投入が取り沙汰されているが、世論は後ろ向きだ。前述のロイターの調査によれば、トランプ氏がイランに地上部隊を投入すると予想しているのは65%だが、投入を支持しているのは7%に過ぎない。
米国とNATO諸国との関係も悪化している。現時点で中東戦争を支持しているのはカナダなど6カ国に過ぎない。
にもかかわらず、トランプ氏は強硬姿勢を崩さず、戦争をいつ終わらせるかの判断は自身にあると主張し続けている。
米国の自由民主主義指数が急落
筆者が注目したのは、トランプ氏が2期目の自分ははるかに大きな権限を持っていると述べたことだ。
ブルームバーグは22日、2期目のトランプ政権の閣僚は大統領を抑制する「ガードレール」の役割ではなく、行動を後押しする「青信号」の役割に置き換わったと報じた。イエスマンに囲まれたトランプ氏は「裸の王様」だというわけだ。
欧州の専門調査機関も同様の見立てだ。
スウェーデンの独立調査機関「V-Dem研究所」は、17日に発表した年次報告書(民主主義リポート2026)の中で、米国の昨年の自由民主主義指数を引き下げて0.57とした。0.79だった2024年から1年間での落ち幅は1789年以降の最大である。また0.57という水準も、公民権運動の渦中だった1965年と同程度だ。
急落した要因は、トランプ氏が米国史上最も自らに権限を集中させ、それを強大化していることだ。統治機構におけるチェック・アンド・バランスが悪化したため、米国は過去50年あまりで初めて「自由民主主義」の体制区分から外れ、「選挙民主主義」に格下げされてしまった。
選挙制度も危うい状況に
民主主義の“最後の砦”とも言える、選挙制度の信頼が揺らぐリスクも生まれている。
トランプ氏がセーブ・アメリカ法の成立に固執しているからだ。有権者登録の際に米国市民権の証明を義務づけるこの法案は、民主党支持が多いとされるマイノリティーの選挙参加のハードルを高め、中間選挙で共和党を勝利させることが狙いだ。
この法案は2月に下院を通過したが、近代史上最も制限的な選挙法案であるため、上院民主党は猛反発している。トランプ氏も法案成立まで民主党との妥協を一切するなと主張しており、予断を許さない状況となっている。
戦争状態が長引けば長引くほど、トップに権限が集中することは過去の歴史が教えている。中東戦争の最大の問題点は、米国の民主主義のさらなる劣化なのかもしれない。
悩める超大国の今後の動向について、引き続き高い関心を持って注視すべきだ。





