EV事業失速で「6900億円赤字」のホンダ 復活への道筋は

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政治の都合が生み出した赤字

「断腸の思いでこの決断を下しました」

 3月12日、三部(みべ)敏宏社長の発表した決算修正にあぜんとした人も少なくないだろう。1カ月前まで、ホンダは通期で3000億円の純利益が出ると予想していたのに、逆に6900億円もの赤字に陥ることを明らかにしたのだ。

 言うまでもなくホンダはトヨタと並んで自動車業界の“勝ち組”と呼ばれ、一時は日産の救世主として期待されていた会社である。

 直接の原因はEV事業の失速だ。同社の資料には四輪の主戦場のアメリカにおいて、EV購入に対する補助が打ち切られたことから、年間150万台の売り上げが見込めなくなったとある。

 経済ジャーナリストの井上久男氏が解説する。 

「ホンダを取材していると、同社が赤字になってしまうことはある程度分かっていました。実際、同社に先んじて米フォードが四半期で1兆7000億円、GMが5000億円の巨額赤字を出しています」

 これはアメリカならではの事情がある。5年前、三部社長は、エンジン車を全面的にBEV(バッテリー式電気自動車)と、FCEV(燃料電池自動車)に切り替えてゆくと宣言。当時、米バイデン政権が、自動車メーカーに環境規制のハードルを課し、一方でインフレ抑制法による税額控除を与えることでEVの増産を後押ししていたからだ。ところがトランプ政権になると一転して化石燃料の増産が掲げられ、補助も打ち切られる。自動車メーカーは軒並みはしごを外されてしまったわけで、ホンダの下方修正は、政治の都合が生み出した赤字ともいえる。

明るい材料

 同社は、EV関連で2兆5000億円もの損失を計上することも明らかにしているが、復活への道筋はあるのだろうか。

「ホンダは4.3兆円ものキャッシュを持っており、この程度ではびくともしません。EVも計画台数を大幅に減らしますが、いずれ自動運転の時代が来ることを考えれば、相性の良いEV事業を続けるのは間違いではない」と井上氏。

 同社には明るい材料もある。二輪事業は3四半期の決算で5915億円の営業利益を上げている。特にインド、ブラジルでは順調に台数を伸ばし、過去最高の2130万台に手が届くという。

「ホンダという会社は、二輪事業が埼玉中心、四輪が栃木中心と、それぞれ独立しており、社内に“横串”のようなものが通っていません。二輪部門には汎用部品を使うなど徹底したコスト削減の文化があるかと思えば、四輪でのコスト意識はびっくりするほど低い。この四輪を、いかに二輪のやり方に近づけ、新興市場を開拓していくかが、再生のカギになると思います」(同)

 世界のトヨタもテスラも手がけていない二輪。それが、ホンダ再生のカギになるかもしれない。

週刊新潮 2026年3月26日号掲載

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