敗戦でも評価は上昇?沖縄尚学・末吉良丞にスカウトが見た“完成度”

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ドラフト戦線の中心に浮上する可能性も

 投球面で昨年の夏と比べて特に気になったのがスライダーだ。夏は鋭く横に変化し、カウント球や勝負球として威力を発揮していたが、この日は変化の鋭さ、精度ともに物足りなかった。自らも末吉と同じサウスポーで、投手育成に定評のある沖縄尚学の比嘉公也監督も「スライダーが良い時はストライクゾーンからボールに変化して空振りが奪えるのですが、今日は狙ったところにほとんど決まらなかったです」と話している。終盤にとらえられた背景には、武器の一つであるスライダーが本調子ではなかった点が大きく影響したと言えそうだ。

 ただ、そんな末吉に対して視察したスカウト陣からは、夏より投球内容が良くなかったにもかかわらず、評価する声が聞かれた。

「秋は夏の疲れもあってかなり心配な状態でした。フォームのバランスも崩れていて、力を入れるとボールがどこにいくか分からない感じで、修正するまでに相当時間がかかるように見えました。ただ今日は多少ばらつきはありましたが、ストレートも力がありましたし、打者を押し込むことができていた。チェンジアップとフォークも去年まではあそこまでブレーキがなかったと思います。プロでは調子が良い時の方が少なく、悪い時にどこまで投げられるかが重要ですから、そういう点でも完成度が高いと思いますね」(セ・リーグ球団スカウト)

「調子が良くないと聞いていましたが、春先にこれだけ投げられれば十分でしょう。ストレートもコンスタントに145キロくらい出ていましたし、緩急の使い方も上手い。強いて言えば少し完成され過ぎていて、今後の“伸びしろ”がどうかという点は気になりますが、投球術とかマウンドさばきは教えてできるものではなく、その点はさすがだと思います。高校生の左投手としてはやはりトップクラスだと思います」(パ・リーグ球団スカウト)

 末吉は「甲子園という場所でポテンシャルを引き出してもらいました」とも話しており、秋の状態から復調してきた手応えは感じていたようだ。また変化球については冬の間にチェンジアップとカットボールを磨いてきたという。カットボールはこの日キャッチャーからサインが出なかったため使われなかったが、投球の幅を広げる工夫が好投に繋がったと言えるだろう。

 今後の進路については「現時点ではプロ一本で考えています」と語った末吉。春季大会、そして最後の夏でさらに状態を上げることができれば、ドラフト戦線の中心に浮上する可能性も十分にある。高校生左腕の中でもトップクラスの評価に変わりはない。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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