まさに「日曜鈴木亮平劇場」 “ぞわぞわしちゃう設定”でも説得力があるワケ

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 なりすましや入れ替わりに無理があると、そこでひっかかっちゃうのだが、松山ケンイチが整形して鈴木亮平になるという骨格的改造の説得力に、初回から膝を打ちまくったのが「リブート」。立ち耳に仕上げるマーキングなど、細部も完璧。さまつだがそういうとこ大事。

 主演の鈴木亮平が演じるのは警視庁の悪徳刑事・儀堂歩(ぎどうあゆみ)、松ケンが演じるのは昔ながらの洋菓子店パティシエ・早瀬陸なのだが、亮平に課せられたタスクはなかなかに複雑。「儀堂本人・中身は陸・中身は儀堂だが陸のフリ」と演じ分ける。さらには、二人の対決と対話の場面も長回し。表情筋で真逆の性質を差別化。まさに日曜鈴木亮平劇場だ。

 リブートとは、主に罪から逃れるために別人になりすますことで、造作だけでなく声帯もいじる整形手術を施す。外見のみならず、なりすます人間の仕事内容や生活、交友関係、もっている知識や技術全てを短期間でたたき込む必要がある。バレないようごまかすスキルも必須。ぞわぞわしちゃうのよね、こういう設定は。

 で、なんで一介のパティシエがリブートしなきゃいけなかったかというと、愛する妻(山口紗弥加)が殺されて、その殺害容疑をかけられたからだ。妻は会計コンサルだったが、実は裏社会の資金洗浄を任されていたことが判明。表向きはクリーンな大企業CEO、裏ではマネーロンダリングで政財界をも牛耳る合六亘(ごうろくわたる/北村有起哉)の下、巨額の資金を動かしていたという。

 話はズレるが、イラスト解説の合六プレゼンツ・マネロンの仕組みがすごいなと感心しちゃった。寄る辺ない若者たちの面倒を見る冬橋航(永瀬廉)には汚れ仕事(脅迫・殺害など)の実行役をさせつつ、若者たちには仕事と称して法人口座を作らせ、資金洗浄の下地を確保。罪悪感を持たずに若者も潤い、組織も繁栄。金に目がくらんだ輩には非道な制裁で恐怖統制を敷く。ポップな解説は池上彰ばりに分かりやすくて、闇の深さを示唆。

 で、この裏組織で巨額の横領が発覚、妻はそのせいで殺されたという。自分にかけられた妻殺しの嫌疑を晴らし、妻の敵を討つために、陸は裏組織とつながる儀堂にリブート。これをもちかけたのが妻の後任・幸後一香(こうごいちか/戸田恵梨香)。難病の妹(与田祐希)の治療費が億単位という点で、横領の首謀者である可能性も浮上。

 うっかり巻きこまれた一般人は陸だけではない。儀堂の妻・麻友(黒木メイサ)も、儀堂の泣き所として人質に。

 陸の妻を殺したのは誰か、裏組織の金を横領したのは誰か。だまし合いの泥仕合を展開してきたが、どうも裏組織だけの話ではなさそうだ。儀堂に目を付けてきた監察官・真北正親(まさちか)がどうしても正義の人には見えなくてね。伊藤英明のせいだな。

 儀堂と陸、W亮平がタッグを組んだ途端に、早速ピンチ。背任容疑で警察に捕まる陸、裏組織から追われ、一香からも脅される儀堂。これ、どうなる? 巨悪を成敗できるとは到底思えない。不可逆的リブートの顛末が納得のいく形だといいなと思いつつ、亮平劇場を鑑賞している。

吉田 潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2026年3月12日号掲載

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