「プーチンは長期戦を考えている」 ウクライナ侵略4年で「前ロシア大使」が明かす大統領の“3つの誤算”
大国復活が政策目標
第二の過ちは、「首都キーウを短期間で制圧する作戦に失敗したこと」だという。
「侵攻を開始した日の朝、ロシア空挺部隊がキーウ近郊のホストメル空港に突入しましたが、ウクライナ国防軍が即応したため、大規模輸送機で装甲部隊を空輸し、キーウを短期制圧するという電撃作戦は失敗しました。また、初期に特殊部隊をキーウに直接送り込み、政府中枢を迅速に制圧する作戦(デカピテーション作戦)を試みましたがこれも失敗した。ウクライナが米軍からの詳細なインテリジェンス情報を得て、ロシア軍の襲来に十分備えていたことが決定的でした」
第三の過ちは、「NATO(北大西洋条約機構)を含む西側の動きを見誤ったこと」だった。
「NATOを含む西側の強力な支援がなければ、ウクライナは随分前に敗北していたでしょう。プーチンは、アフガン撤退後の米国は軍事介入に消極的と考えていました。バイデン大統領はかなり早い段階で軍隊を送らないと明言。メルケル独首相の引退など欧州指導者たちの交代もあり、NATOの結束は弱く、制裁も限定的と予測していた。実際には、NATOからウクライナへの軍事援助は質、量とも時間の経過につれて増大し、ロシアに対する制裁は前例のない規模となり、ロシアの継戦能力を圧迫することになりました」
ここで上月氏の経歴を紹介しておくと、1956年生まれで東京都出身。81年、東京大学教養学部教養学科卒業後、外務省に入省。北米局日米安全保障条約課長、欧州局ロシア課長、欧州局長、大臣官房長などを経て、2015年11月に駐ロシア特命全権大使に就任し、8年間務めた後、23年に退官した。
現在、千葉工業大学特別教授、東海大学国際学部教授兼平和戦略国際研究所所長として国際政治・ロシア研究に従事。初の著書『プーチンの歴史認識 隠された意図を読み解く』(2月18日新潮社刊)を上梓した。
同書で上月氏は、プーチン大統領がウクライナ侵攻に踏み切った理由をわかりやすく解説している。
「プーチンは、東欧諸国のNATO化に危機感を持ち、ウクライナの追随を脅威ととらえていました。歴史的にも今日的にも、ウクライナはロシアと一体と考えており、彼にとってはロシアの国内問題でした」
と、上月氏は改めて説明する。
有料記事【ウクライナ侵略4年「前ロシア大使」が明かす 経済不安でも「プーチンが停戦しない理由」】では、ロシアがウクライナ侵攻に踏み切った理由、上月氏がロシア大使時代にプーチン大統領に対面した時の印象、和平交渉が進まない理由などについて詳述している。




