“ガチョウの羽根”が不足して“バドミントン”が危機に…人工素材の「合成シャトル」の開発が困難を極める理由

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ついに合成シャトルが…

 もしそうならば、「水鳥の幻を追うのでなく、まったく新しい合成シャトル独自の性能を追究すればいいじゃないか」という発想転換もできそうだが、そうなれば、これまでの王者が不利になり、ずっと勝てなかった選手が合成シャトルのおかげで覇者になるといった現象が起きる可能性がある。それはつまり、従来のバドミントン技術を否定することにもなりかねない。できるならば、シャトルの変化でバドミントン競技の本質が変わることは避けたいというのが、用具を提供するメーカー、モノづくりに懸ける技術者たちの矜持だろう。

 実は水鳥不足が深刻化する一方で、うれしくも切実な状況が起きている。それは世界的なバドミントン人気の上昇だ。(株)マーケットリサーチセンターのレポート(2025年3月24日)によれば、

『年平均成長率5.4%で成長する世界のシャトルコック市場は、2024年の7億2653万米ドルから2034年には12億5000万米ドルに拡大すると予測されています』

 つまり、いっそうの供給拡大が求められ、深刻なシャトル不足に陥ることが明白。せっかくの人気に水を差さないためにも高品質の合成シャトルの開発が急務というわけだ。

 そんな中、つい先日3月3日、バドミントン・ラケットの世界最大手であり、シャトル販売でもトップシェアを持つYONEXからニュース・リリースが発表された。報道資料には次のように記されている。

『高い競技性能と素材革新を両立したバドミントン競技用シンセティックフェザーシャトルコック「CROSSWIND 70(クロスウィンド 70)」を一部大会より使用開始します。

 本製品は、合成球のカテゴリーでありながら、練習から競技レベルの使用に耐えうる性能と品質を目指しました。「未来の大会球」として新たな選択肢を提案します。
 (中略)
 約15年にわたり天然羽根を使用せず、人工素材で作ったシャトルコックの開発に取り組む中で、弊社は「再現」ではなく「学び」に価値を見出しました。天然羽根が築いてきた基準に敬意を払いながら、その飛行特性を追求し続けた結晶が「CROSSWIND 70」です』

 この製品は、すでに日本バドミントン協会の検定審査合格品になっているという。

 いよいよ、合成シャトルが世界トップレベルの大会でも使用される新時代の扉を開くのか。世界的にはVICTOR社からも競技用の合成シャトルが発売されている。

 今後、選手たちが実際に使用した感想、大会で使われ、さらに改良を加えられて合成シャトルが育っていく過程に注目したい。

小林信也(こばやし・のぶや)
1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。大学ではフリスビーに熱中し、日本代表として世界選手権出場。ディスクゴルフ日本選手権優勝。「ナンバー」編集部等を経て独立。『高校野球が危ない!』『長嶋茂雄 永遠伝説』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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