わが子は発達障害かも?エリート商社夫は“汚点”と認めず… 30代シンガポール駐在妻が悩み続けた絶望の日々
汚点
そしてついに、最悪のトラブルが起こる。隼斗くんが、クラス内で不適応を起こし、同級生に暴力を振るってしまったのだ。学校から連絡を受けて、江梨子さんは言葉を失うほどのショックを受けたという。
「けれどそれでもなお、原因が息子の特性にあるとは認めたくありませんでした。周囲には『環境の変化で不安定になっているだけ』と説明し続けたんです」
その背景には、駐在妻コミュニティ特有の「見栄」があった。夫が商社で出世街道を突き進むなか、わが子に発達障害の疑いがあるという事実は、江梨子さんにとっても受け入れがたい汚点のように感じられたのだ。
加えて、海外の日本人社会は驚くほど狭く、閉鎖的な一面も。噂は瞬く間に広がり、ひとたび「問題のある家庭」というレッテルを貼られれば、母親自身もコミュニティから排除され、孤立を招きかねない。
「弱みを見せれば、夫の地位まで揺らぐのではないか。ここで認めてしまったら、もう逃げ場がなくなる……」
江梨子さんは、そう自分を追い詰めていった。
「弱音」を吐ける場所を求めて
「ただ、江梨子さんが勇気を出して支援を求めたとしても、海外ではその手が届きにくい現状があるのも事実です。シンガポールのような都市でさえ、日本語で発達支援を受けられる施設は極めて限られています。日本人学校の支援クラスもウェイティング状態で、入ることは簡単ではないといわれています」
と、各国の教育事情に詳しい前川さん。
「適切な受け皿が不十分な環境で、“なにもなかったこと”にして誤魔化しながら通学させているのが実情。くだんの隼斗くんも、適切な支援を受ける機会をのがしたまま、今も同じインターナショナルスクールに通い続けています」(前川さん、以下同)
しかし、親が「認められない」のは、決して愛情が足りないとか、親が一方的に悪いわけではない。一人で抱えきれないほどの不安に対し、一緒に抱えてくれる味方がいないことも問題のひとつになっているそう。
「こういったお悩みに対処するために、最近ではボランティアや一般社団法人によるオンラインの相談窓口も増え始めています。私自身も一人のカウンセラーとして、世界のどこにいても安心して弱音を吐ける場所を作るべく、オンラインの相談を行っています」
海外の日本人社会は、家庭の事情や夫の役職が筒抜けになりやすく、どうしても周りと比べられてしまう環境だ。そんな中で、「見栄を張って自分をよく見せるしかない」駐在妻たちを守るには、まず社会全体で支える仕組みを整えなければならない。
「物理的な距離を超え、誰もが安心して助けを求められ、その手助けを気兼ねなく受けられる――。それこそが、異国の地で孤立する親子を救う光になると信じています」
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