まさかの「いいケツしてんな」発言も…「カンニング竹山」がキレ芸「番組つぶしてやる」で取り戻した「制御不能な笑い」

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潜在的なニーズ

 もちろん、芸歴を重ねてポジションが変わっていくこと自体は自然な流れではある。しかし、永野がそんな現在の竹山のことを「置物タレント」と言い切ったのは、多くの視聴者が彼に対して漠然と感じていた物足りなさを見事に言語化したものだった。あの頃のようなキレ芸をもう一度見せてほしいという潜在的なニーズは確実に存在していたのだ。

 今回の「脱力タイムズ」では、そんな竹山の芸人魂を呼び起こすための工夫があった。それは「悪意のある切り取り編集」という手法を用いたことだ。というのも、竹山は昨年10月に「ABEMA Prime」(ABEMA)に出演した際、「国旗損壊罪」をめぐる発言で炎上したことがあったからだ。その際に、発言の一部が切り取られてネットニュースなどで広まることで、本人の意図しない形で言葉が独り歩きしてしまうということがあったのだ。

 竹山はそれを引き合いに出して「去年の年末やられてるんだよ! こんなの流されたら、まただよ!」とぼやいていた。番組側は竹山がコメンテーターとして切り取り被害に悩まされているということは承知の上で、それをあえて誘発するようなVTRを作ってみせたのだ。竹山が怒っても当然の状況を整えることで、彼の全力のキレ芸を引き出すことに成功していた。

 竹山は社会問題を語るコメンテーターとしても立派な仕事をしている。しかし、芸人としての彼の面白さを知っている人からすると、そこにとどまっているのは物足りないという感想が出てくるのも当然だ。そんな中で、「脱力タイムズ」は少々荒っぽいやり方で彼を追い込んで、本領を発揮できる場面を演出してみせた。

 この企画が大きな反響を巻き起こしたのは、単に竹山のキレ芸が久々に見られたからではなく、テレビというメディアの中でどんどん失われていく「制御不能な笑い」を視聴者が求めていたからなのかもしれない。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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