「見ていない作品ばかりで選べない」の声が… 「読売演劇大賞」候補作に“小劇場系”が集中したワケ

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 年度末を迎えるこの時期は、映画や演劇に関する賞の授与が相次ぐ。とくに読売新聞が主催する「読売演劇大賞」は演劇界における“国内最大の賞”だが、そこで過去に例のない異変が起きているという。

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「見ていなければ評価の下しようがない」

 全国紙文化部記者が言う。

「読売演劇大賞には最優秀作品賞のほか、同男優賞や同女優賞、同演出家賞、同スタッフ賞、それに若手演者が対象の杉村春子賞、ベテラン俳優の長年の功績を顕彰する芸術栄誉賞があります。うち5賞の候補者は1月17日に発表されましたが、目を引いたのが作品賞。ノミネートされた5作品では4作品が小劇場で公演が行われた作品でした」

 4作品は以下の通り。

「三人の密偵」(東京・新宿/サンモールスタジオ)

「マライア・マーティンの物語」(同)

「Downstate」(東京・世田谷区/下北沢駅前劇場)

「ガラスの動物園」(東京・墨田区/すみだパークシアター倉)

 いずれも定員が200人に満たない劇場での公演で、上演期間は1週間から10日ほど。残る1作品はKAAT神奈川芸術劇場で上演された「最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote」で、会場の定員は1200人、上演期間は3週間だった。

「作品賞は9人の選考委員が5作品に絞り、そこから演劇評論家や演劇記者、大学の研究者、劇場関係者ら107人の投票委員が最も優れた作品を選びます」

 つまり選考委員が各賞の“たたき台”を用意するのだが、投票委員の一人は言う。

「今回は投票委員の中から“見ていない作品ばかりで選べない”という声が少なからず上がった。私は5作のうち2作を見ていましたが、『最後のドン・キホーテ~』だけという人は多かった。すべての作品を見たという委員は全体の2~3割にも満たなかったはず。小劇場系作品の質が低いというのではなく、ニッチな作品を見る機会は限られる。見ていなければ評価の下しようがないんですよ」

大きな目標

 結果、最優秀作品賞には「最後のドン・キホーテ~」が。ダントツの得票だったそうで、正賞のブロンズ像「蒼穹(そうきゅう)」と副賞の100万円が贈られた。

 日本の演劇に関する賞は、主要なものでは、1966年に紀伊國屋書店が創設した「紀伊國屋演劇賞」、その後は75年に東宝系の「菊田一夫演劇賞」が生まれ、次いで92年に「読売演劇大賞」が誕生。後発ながら近年は高円宮妃久子さまを来賓に迎え、贈賞式を帝国ホテルの大宴会場で行うなど、名実共に最も栄誉ある賞との位置付けだ。

「五つの賞の中から選ばれる大賞には賞金200万円が贈呈されます。超高額とはいえませんが、演劇関係者にとって読売演劇大賞を手にすることは、一つの大きな目標になっています」

公平性に疑問

 今年に限って、小劇場系作品に高評価が集中したのには理由があるという。先の文化部記者が解説する。

「最近は小規模劇場にも注目すべき作品や演者、演出家が少なくないので、選考委員の多くが地道に足を運んでいるんでしょう。劇場の規模や公演期間にかかわらず、委員は“これは”という作品を推したがる。若い才能や埋もれている逸材に焦点を当てるのは大切なことですが、今回は賞の公平性や正当性に疑問が残ると言わざるを得ません」

 ところで、2月3日発表の杉村春子賞には人気歌舞伎俳優の尾上右近(33)が、芸術栄誉賞には人間国宝の片岡仁左衛門(81)が選ばれた。

「知名度のある二人でバランスを取ったのでは。彼らが出席すれば、贈賞式は華やかになりますからね」

 大賞が発表される贈賞式は、2月27日に行われる。

週刊新潮 2026年2月26日・3月5日号掲載

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