「いつ死ぬかわからない、朝にお金を入れたら夕方には儲かっていないと」70代父の焦り 結果、老後資金2000万円がゼロに…止められなかった娘の後悔【専門家が解説】

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専門家からのアドバイス/家族さえ「不可侵」だった老後資金の運用状況

 なぜ、堅実な人生を歩んできた親の人生設計がこれほど脆く崩れたのか。お金の問題について金融知識と心理の面からアプローチするファイナンシャル・セラピストの上原千華子さんは、その背景にある心理的な落とし穴を指摘する。

「最大の問題は、家族間でお金の話を共有できていなかったことにあります」

 洋造さんは、ともえさんら子どもたちはもちろん、妻にも資産運用の相談をしていなかった。口座がブラックボックス化されていたため、本人が不審な支払いを繰り返していても、周囲が早期に異変に気づくことができなかったのだ。

 こうした傾向は、「お金についてあれこれ話すのは卑しいこと」と捉える中高年世代に目立ち、お金に関するトラブルを一人で抱え込みやすい。今回のケースでも、本人に「自分で稼いだ金だ」という自負があり、失敗を認めることが敗北感に繋がってしまうという、プライドの高さが問題を深刻化させた。

「加えて、デジタル化の波も被害を助長しています。ネット銀行やアプリを通じた取り引きは、目に見える証拠が残りにくく、PCやスマホの中で全てが完結してしまいます。投資詐欺に巻き込まれても、家族が異変に気付きにくいのです」

親の資産を守るための「対話術」

 詐欺のテクニックは年々進化しており、お金の知識をこまめに更新していても、完全に防衛することは難しい。高齢な親ならなおさらだ。ではどうすれば?

「日ごろから家族同士でお金について話す習慣をつけておくといいですね。異変に気付きやすくなって、被害を予防する、あるいは被害を最小限に食い止めることができます」

 大切なのは、いきなり「お金はどのくらいある?」などと資産状況を問い詰めたりしないことだ。親は警戒して、ますますお金の話を避けるようになってしまう。

 投資詐欺の情報については、テレビのニュースやワイドショーをきっかけに「こんな怖い詐欺があるみたいだけど、うちは大丈夫かな?」と、親を思いやるスタンスで会話の糸口を作る。資産運用の状況については、「この先、やってみたいことってある?」と未来について話しながらお金の話題に少しずつ触れていく。病気や介護について不安があるようなら、「いざというとき困らないように」と、具体的な金額に触れなくても、銀行や証券会社の口座など「お金のありか」について確認しておく。

 親を心配する気持ちが伝われば、お金の話は「いやらしいもの」から「家族を守るためのポジティブな情報共有」へとアップデートしていく。これこそが、資産を守る鍵となるのだ。

 今回は詐欺被害に遭ったケースだが、本人の投資姿勢にも問題はあったと上原さんは言う。

「これから投資を始める人は、いきなり全財産をつぎこまないことです。世代に関係なく、個別株など値動きの大きい商品は、目減りしてもうろたえずにすむ余裕資金の2割までにしてください。特に、高齢者は“稼いで挽回”が難しいですから、生活費にまで手を出さないよう、投資額に制限を設けておくことは大切です」

 投資の有料講座や儲け話にひかれたら、家族に一言相談することも大切だ。家族に相談しづらい場合は、「消費者ホットライン」(188)や警察(#9110)でもいい。いずれも無料で助言がもらえる。

※紹介する事例は、プライバシー保護等のため、アレンジを加えている。

今回のアドバイザー/上原千華子さん
金融教育家/ファイナンシャル・セラピスト。欧米投資銀行勤務歴17年、個人投資家歴25年以上。AFP、証券外務員一種、NLP(実践心理学)マネークリニック(R)認定トレーナー。2018年、ウェルス・マインド・アプローチ創業。資産運用講座を実施し、2022年より「3ヶ月マネー実践講座」を提供開始。心理学を取り入れたライフプランと資産運用をアドバイスしている。現在は企業・大学でも登壇し、延べ5000名以上に金融教育を届けている。著書に『「お金の不安」をやわらげる科学的な方法 ファイナンシャル・セラピー』(日本能率協会マネジメントセンター)。

取材・文/鷺島鈴香

デイリー新潮編集部

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