「天然」「朝獲れ」「刺身用」…空前の“シールブーム”で「魚シール」に子どもたちの熱視線 廃棄問題に向き合う“シールアート”とは

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廃棄問題に“アート”の光を当てる

 シールを廃棄するには当然費用が必要となるため、横浜食品サービスの瀬戸社長は数年前から「廃棄シールを切り絵か何かに活用できないか」と考えていた。そして、同社のブランディングに産学連携で携わっていた、横浜市立大の国際商学部でマーケティングなどを専攻する「柴田典子ゼミ」の柴田教授や学生らに協力を求めた。

 両者の間で協議が重ねられ、同社の社会的責任(CSR)という観点から、「SDGsもったいないシールを救え!おさかなアート大作戦」と銘打った取り組みを展開。昨年秋から学生らの働きかけにより、市内の学童保育所で「魚のシールアート」をテーマにした活動を続けている。

 子供たちは、マグロやエビなどの魚介をかたどった台紙に、楽しみながら廃棄シールをちぎって貼り付け、塗り絵のように色付けしていく。柴田教授は、「子供たちはシールそのものが好きなようで、細かくちぎりながら好きな色を好きな場所に貼って楽しんでいる。糊が必要ないのも便利で、シールアートをきっかけに魚に興味を持つようになった子供も多い」と話す。

 同社が横浜南部市場内で運営する和食レストラン「横濱屋本舗食堂」の壁には、子供たちが作ったシールアートの作品集が飾られているほか、同社や水産庁のHPには、活動内容などが掲載されている。

ワークショップは“ほぼ満席”

 昨年11月下旬には、水産庁などが主催するイベントで、日比谷公園内のブースを借りて、魚のシールアートのワークショップを開催。1時間半の間、利用席はほぼ満席となるなど好評だったといい、今後もSNSなどで活動状況を周知していくことにしている。

 活動を進める学生は、「今後も多くの子供たちに魚のシールアートを楽しんでもらうことで、大量廃棄の現状を広く周知させていきたい。同時に無駄を防ぐことで、その分、パックに少しでも多く魚を入れてもらえるようになればうれしい」と話している。

 魚パックのシールの廃棄問題は、供給サイドが商品をもっと売れるようにと努力する中で発生するロスだ。とはいえ、その処理経費が魚価高につながっている可能性もある。魚のシールアートが広がりを見せる一方、シールによるPR競争が沈静化するくらい消費者の魚消費が高まれば、この問題も少し解決に向かうのかもしれない。

川本大吾(かわもと・だいご)
時事通信社水産部長。1967年、東京生まれ。専修大学を卒業後、91年に時事通信社に入社。長年にわたって、水産部で旧築地市場、豊洲市場の取引を取材し続けている。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社)。『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』(文藝春秋)。最新刊に『国産の魚はどこへ消えたか?』(講談社+α新書)がある。

デイリー新潮編集部

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