「国際法は必要ない」 トランプ大統領のベネズエラ急襲、真の狙いとは 「麻薬撲滅が理由ならメキシコとコロンビアを狙うはず」
本当に麻薬撲滅が理由なら「コロンビアとメキシコを狙うはず」
「トランプ氏は、自国の領土拡大のためではなく、ベネズエラの民主化や、米国への麻薬流入を止めるということを目的に据えています。CIAを使い、内通者を確保して、入念な準備の上で臨んだ作戦でした。結果として、最低限の被害でスマートに目的を遂げただけでなく、アメリカの圧倒的な軍事力と情報力を世界に見せつけることにも成功しました」(山上氏)
『それでもなぜ、トランプは支持されるのか』などの著書があるジャーナリストの会田弘継氏も「決して思い付きの行動ではない」と分析する。
「トランプ氏を支える財界人の一人に、国防・情報機関向けのAIインフラを提供する企業『パランティア』の会長を務めるピーター・ティール氏がいます。米軍は同社の技術を駆使し、緻密に作戦の立案や、民意の分析を行えたはずです。実際、拘束は迅速に行われ、ベネズエラで大規模な反乱やデモも起きていません」
現実離れした作戦を実行するだけの、背景や用意周到な準備があったというのだ。
一方で、作戦の大義名分に掲げられている「麻薬撲滅」をうのみにすることに対して、明海大学教授の小谷哲男氏は疑義を呈する。
「米国内の麻薬は、コロンビアから流通しているものが多い。一方でベネズエラからの麻薬は、ほとんどがヨーロッパに向かいます。近ごろ“ゾンビ麻薬”として問題視されているフェンタニルも、中国から原材料がメキシコに輸入され、米国に流れている。本当に麻薬撲滅というなら、コロンビアとメキシコを真っ先に狙うはずなのです」
“国際法は必要ない“
トランプ大統領は今回の作戦の“成果”として、ベネズエラの石油産業を掌握し利益を上げられることを強調しており、投資を呼びかけてもいるが、
「マドゥロ大統領の前任であるウゴ・チャベス前大統領は、石油産業を“国有化”し、国内にあった米国の石油企業の資産も接収しました。トランプ氏はそれをもって“窃盗だ”と言って今回の作戦の理由付けにもしているわけですが、現在のロドリゲス暫定大統領も元々は、このチャベス=マドゥロの流れをくむ人物です。米石油会社にはこの“国有化”の苦い経験があり、先行きが見通せない中で大胆な投資はしづらいと思います」(小谷氏)
となると、トランプ大統領が言うようにベネズエラが「本当の脅威」だったのかはおろか、作戦の意義も疑わしくなってくる。
「アメリカは今回、あくまでもマドゥロ氏という“一個人”を逮捕した法執行との建前を取っています。G7などでは正式な大統領と認められていないので、ここまでは納得できます。一方で、軍事力を使った主権と領土の侵害になるやり方だったのも確か。トランプ氏は“国際法は必要ない”と語り、今回この部分の正当化を完全に放棄しています」(同)
批判を受けかねない作戦をあえて実行した理由として挙がるのが、11月に控えている「中間選挙」の存在だ。低迷していたトランプ氏の支持率は今回の作戦後、ロイター通信などの調査によると昨年12月の39%から42%に微増した。
後編では、今回のベネズエラ急襲に対するアメリカ国民の受け止め方や、台湾有事への影響などについて報じる。
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