「中学生でもわかる」ニュース革命と“大誤報”の代償…久米宏さんが築いた一時代と、今なお語り継がれる「功罪」

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日常会話のような口調

 しかし、徐々に内容が評価されるようになり、視聴率は上向いていく。そして、いつの間にかテレビ朝日を代表する番組として確固たる地位を築くようになった。

「ニュースステーション」は、バラエティ番組制作のノウハウを取り入れた画期的なニュース番組だった。セットはおしゃれなつくりにしていたし、ニュースをわかりやすく見せることにこだわった。中学生でも理解できるレベルの情報を提供するというコンセプトを掲げて、さまざまな工夫をこらしてニュースの核心を伝えようとしていた。

 久米氏は話し方にもこだわった。ニュース原稿を自分の手で直して、伝わりやすい文章を作り上げた。堅苦しいしゃべり方をせずに、日常会話のような口調で話すことを心がけていた。

「報道番組をバラエティ化する」という革命を成し遂げたことで「ニュースステーション」は人気番組になった。現在では、その手法を取り入れた報道番組や情報番組が一般的になっているので、その革新性がわかりづらくなっている部分はある。

 一方、番組が影響力を持ちすぎたことによる弊害もあった。その代表が「ダイオキシン騒動」である。所沢で収穫された野菜がダイオキシンで汚染されていると大々的に報道したことで、埼玉県産の野菜が販売停止になったり価格が下落したりする事態に発展した。

 実際には健康被害をもたらすような検査結果は出ていなかったことから、番組ではのちに情報が訂正され、久米氏が謝罪することになった。これ以外にも「ニュースステーション」の報道が深刻な被害をもたらした例はいくつかあった。

「ニュースステーション」は、バラエティの手法を取り入れて視聴者を惹きつけることに成功した。しかし、間違った情報を印象的な形で広めることで被害を拡大してしまうという危険性もはらんでいた。

「ニュースステーション」に関して功罪の両面が語られるのは、それだけ革新的で影響力の大きい番組だったからだ。テレビに今以上の影響力があった時代に放送されていた「ニュースステーション」は、間違いなく歴史に残る番組であり、それを手がけた久米氏の存在も特別なものだったのだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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