巨人と日本ハムの“不可解な動き”も…FA移籍に伴う「人的保障」のルールが有名無実化しているのか?

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金銭トレードに近い移籍

 このような「人的補償」を巡る問題の裏では、決められたルールが有名無実化している現状があるという。

 編成に関わったある球団の元フロント幹部は以下のように話す。

「ルールでは28人をプロテクトしてリストを提出するとなっていますが、球団の編成同士で繋がりが強い場合はそこまで厳密に運用していないケースもあります。人的補償を獲得する側の球団が『投手なら〇〇、野手なら〇〇が欲しい』とあらかじめ候補を伝えておいて、その要望に沿って回答するということがありました。プロ野球は横のつながりが強い世界で、選手やコーチ時代から親交の深い編成担当同士が多いですからね」

 プロテクトリストの提出とやり取り、「人的補償」となる選手の指名については、NPBが管理しているわけではなく当事者である球団同士に任されている。そういう意味では、水面下でいくらでもやり取りができると言えるだろう。

 そして、このオフの動きでも“不可解だったケース”があるという。それは、日本ハムから巨人に移籍した松本剛の人的補償についてだ。松本の昨年の推定年俸は1億1000万円でBランクに該当しており、日本ハムには巨人から「人的補償」で選手を獲得する権利が発生していたと推測されるが、日本ハムは金銭のみの補償を選択した。これにも様々な事情があるのではないかと言われている。

 前出の元フロント幹部はこう話す。

「巨人は実績がある選手が多く、彼らを全員プロテクトすれば、将来有望な若手は必ず漏れることになります。日本ハムが戦力を補強しようと考えれば、『人的補償』で誰かしら獲得するのは当然のことで、そうしなかったのは何か事情があるのだと思います。過去にも、巨人と日本ハムはよくトレードが行われています。くわえて、選手だけでなくコーチといったスタッフが移籍することも多い。それを考えると、どちらが持ちかけたのかは分かりませんが、今回の松本の移籍については金銭による補償が最初から決まっていたことが十分に考えられます。実質、これは金銭トレードに近い移籍と言えるでしょう。つながりの強い球団同士ではこのような“貸し借り”があることは事実です。今後もまた巨人と日本ハムで選手が移籍する動きあるかもしれませんね」

 2015年からこのオフまでの間に巨人と日本ハムの間では5件の交換トレードが成立している。そのうち3件は2対2で、非常に多くの選手が両球団の間で移籍した。そのほか、2021年のシーズン途中にはチームメイトに対する暴行行為で出場停止処分となっていた中田翔が無償トレードで日本ハムから巨人に移籍している。これもまた両球団の繋がりの強さを感じさせる出来事と言えるだろう。

 このようにFAによる移籍と人的補償は、当該選手だけでなく、過去や未来の移籍にも関連していると考える必要がありそうだ。果たして、ここから巨人と日本ハムの間にまた動きがあるのか。引き続き両球団の動向に注目したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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