「ベネズエラ作戦」断行でも岩盤支持層に批判されるトランプ氏 支持率上昇を阻み続けるのは山積した「米国内の問題」

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建国250周年で試みる「目くらまし」

 11月の中間選挙に向けてトランプ氏の求心力が失われる中、米国は7月4日に建国250年を迎える。データでみる米国の250年の歴史は奇跡と言っても過言ではない。

 1776年の独立宣言当時、面積(13州)は約88万平方キロメートル、人口は約250万人だったが、今や面積(50州)は約983万平方キロメートルと11倍に、人口は世界第3位の約3億4000万人と135倍に増加した。

 経済規模は世界第1位の地位を長年維持し続けており、世界の株式時価総額上位10社のうち8社を米国企業が占めている状況だ。

 窮地に追い込まれつつあるトランプ氏がこの絶好の機会を逃すはずがない。トランプ氏は偉大な歴史を振り返り、国民の愛国心を高める記念事業を司る専任タスクフォースをホワイトハウスに設置し、1億5000万ドル(約235億円)超の予算を確保した。

 極めつけは、フランスの首都パリの凱旋門を模した「ワシントン凱旋門」や、初代大統領を始め米国歴史上の重要人物250人の彫刻を展示する「米国英雄国立庭園」の建設だ。

 いかにもトランプ氏らしい構想だが、このような目くらましで同氏への支持率が高まるとは到底思えない。

経済は加速しても政治は停滞

 気がかりなのは、経済がスポーツカーのように加速しているのに対し、政治が故障したトラクターのように動かないという、ちぐはぐな状態が際だってきていることだ。

 21世紀に入り、共和・民主両党で「過激派」が台頭したことが災いして、現在、予算審議のたびに連邦政府が業務停止(シャットダウン)となるリスクが生まれている。昨年10月から史上最長(43日間)の連邦政府の閉鎖が起きたが、つなぎ予算が失効する今年1月30日に再び連邦政府が閉鎖される可能性が取り沙汰されている。

 国民の物価高への不満を背景に、米国ではアフォーダビリティー(価格の手頃さ)が政治の争点となっていることも気になるところだ。

 この流れを作ったゾーラン・マムダニ氏が1日、ニューヨーク市長に就任した。家賃の値上げ凍結や富裕層への増税といったマムダニ氏の公約について、実現を危ぶむ声は根強い。だが、ワシントン州のファーガソン知事(民主党)が昨年末、アフォーダビリティーを理由に同州の近代史で初となる州所得税を提案したように、各地で富裕層増税(ミリオネア税)の動きが広がっている。

 トランプ政権が成立させた高所得者向けの減税とは正反対の主張であり、アフォーダビリティー論争が社会の分断をさらに進めてしまうのではないかとの不安が頭をよぎる。

 これまでは、経済分野の革新の速度が政治分野の分裂の速度をかろうじて上回ってきたが、この傾向が今後も続く保証はない。今年はトランプ氏が支持する「米国システム(アメリカン・システム)」の限界が露呈する転換点になってしまうかもしれないのだ。

 日本にとって同盟国である米国の今後の動向について、引き続き最大の関心を持って注視すべきだ。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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