「ドラ1候補」佐藤幻瑛の米国大編入にスカウト陣が驚愕 高校ナンバーワン投手にも代理人が接触か…有望アマ選手の海外流出が加速へ

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森井翔太郎の影響

 MLB球団のスカウトによると、佐藤が渡米する背景には“二つの出来事”が影響しているという。

「一つ目は、進学校の桐朋を経て、アスレチックスとマイナー契約を結んで渡米した森井翔太郎の影響が大きいでしょう。契約金は、151万500ドル(当時のレートで約2億3600万円)。これは想像以上に高い契約金との印象を受けましたが、これが一つの基準となりました。日本のプロ野球では、ドラフト指名選手の契約金は、出来高を含めて1億5000万円が上限です。森井の契約金はこれを大きく上回りました。アマチュアの選手にとっては当然大きな魅力になりますよね」

 二つ目は何か。

「大谷翔平が所属するドジャースを筆頭に日本人選手が活躍していることです。チームの戦力としてはもちろんのこと、日本人ファンや日本企業のスポンサーを獲得すれば経済効果が大きい。このような理由からすでに日本のプロ野球で活躍している選手のみならず、アマチュア選手を積極的に獲得しようと調査を進めているMLBの球団が増えていると思います」

 実際、MLB球団は、2025年のドラフト会議で高校生屈指の右腕に手を伸ばしていた。ロッテのドラフト1位である石垣元気(健大高崎)に対して、 森井を上回る好条件でのオファーがあったという。結果的に、石垣は日本でのプレーを選んだが、今後はドラフト1位クラスの選手がMLB球団と契約して渡米するケースが出てきそうだ。

 一方で、NPB球団のあるスカウトは、別の視点で解説する。

「渡米を希望するアマチュア選手が増えている背景は、米国と選手を繋ぐ役割である代理人の存在が大きいと思います。米国では有望な選手は、学生のうちから代理人と契約するのが一般的になっていて、その流れが日本のプロ選手だけでなく、アマチュア選手にも及んでいることは間違いありません。プロの世界ですでに結果を残している選手は代理人同士で激しい争奪戦になるので、有名になる前にアマチュア選手と契約しておこうと先手を打つ代理人も増えてきているのではないでしょうか。このような代理人は、MLBの球団だけでなく、米国の大学にもつながりを持っていますから渡米する決断を下した佐藤幻瑛もそのような代理人がいると思います。我々のようなNPB球団のスカウトからすれば、今後はアマチュア選手が代理人契約を結んでいるのか調査する必要も出てきます。場合によっては高校生や大学生のうちから代理人と交渉するケースも増えてくるでしょう」

日本球界全体の問題

 筆者がスカウト陣から得た情報によると、高校生ナンバーワン投手の呼び声が高い横浜のエース、織田翔希に対して、多数のメジャー選手と契約している米国の大物代理人から既に接触があったという。

 NPBは、有望なアマチュア選手の海外流出について危機感を強めている。

 2025年のドラフト会議からMLBのドラフト指名権がある日本人選手についてはNPBのドラフトで指名が可能となった。ソフトバンクが1位で指名した佐々木麟太郎とオリックスが6位で指名した石川ケニー(米ジョージア大)がそれに当たる。MLBのドラフト会議は2026年7月に予定されているが、佐々木と石川はそれを待って進路を決断する予定だ。日米の球団からドラフト指名を受けた場合、条件の争いとなればNPBの球団が金銭面で圧倒的に不利となることが想定される。

 日本球界全体の問題として、アマチュア選手にどのような魅力や価値を示すことができるのかが、今後の大きな課題となりそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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