箱根駅伝を凌ぐ「幻の駅伝」…日本全国の大学が集った「能登駅伝」、復興の証に“半世紀ぶりの復活”なるか

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地域をつなぐ祭りとしての能登駅伝

 馳浩石川県知事の肝煎りで、すでに復活への動きは正式に始まっているのだ。

 無論、こうした動きに対し、「駅伝より復興が先だろう」との批判も上がりそうだ。12月24日の読売新聞も、「奥能登4市町村では現在も約200路線で通行止めが生じている」「豪雨で再び各地の道路が損壊するなどし、県道38号など5路線で通行止めが続く」「奥能登の輪島市と珠洲市、穴水町、能登町が管理する市町道はさらに深刻で、今も194路線が通行できない」などと報じている。

 これら深刻な状況が復興しなければ、駅伝復活は実現しない。言い換えれば、駅伝の復活は復興が成った証とも言える。さらに、「駅伝の復活は、ただ目に見えるインフラ整備の完了だけでなく、地域のつながりや精神性の復興をも期待できるのです」と、興味深い話をしてくれたのは、新たな能登駅伝構想の先頭に立つ北信越学生陸上競技連盟会長の大森重宜だ。大森は早稲田大学出身。ロス五輪の陸上400メートルハードルの日本代表。いまは実家の大地主神社(七尾市)の宮司を務め、金沢星稜大学の教授でもある。

「発災する1ヵ月ほど前に、馳知事と『能登駅伝を復活させましょう』と話をしていたのです」

 そう教えてくれたあと、『祭り』の研究者である大森は続けた。

「能登には〈結〉(えー)という概念があります。互酬性とか〈よばれ〉を大切にする。農作業などの労働を地域の仲間が互いに助け合って行う。客人を呼んでもてなす〈饗応の文化〉もありました。だから、能登駅伝は、ただ走るのでなく、こうした地域の文化伝統を受け継ぐ祭りとして復活させたい。〈もうひとつの箱根駅伝〉を作っても仕方ありません。大学の枠でなく、出身県別にチームを作って、青山学院の選手から早稲田の選手にタスキをつなぐとか、女子選手にもチームに参加してもらうとか。スポーツの新しい形を追求したいのです。東大とか北大、東北大といった国立大学にも強いランナーがいます。そうした選手が出場できる駅伝にしたい。区間賞を獲ったら、〈研究費〉という名目で賞金を出すのもいいと考えています」

 スポーツの新しい形を追求し、地域をつなぐ祭りとしての能登駅伝。その実現を切望する。

スポーツライター・小林信也

デイリー新潮編集

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