不況すぎて「後払い決済」急増、「借金地獄」の懸念も…トランプ氏「経済政策失敗」を埋め合わせる中南米攻撃も深刻な火種に
通用しなくなった“言い訳”
トランプ氏の行政行為に関する私物化も問題になっている。米建国250周年に当たる来年、自らの肖像を刻んだ記念通貨の発行を計画しているのに対し、民主党は現職または生存している元大統領の顔を貨幣に使用することを禁ずる法案を議会に提出する事態となった。
トランプ氏はさらに批判的なメデイア関係者に対して侮辱発言を繰り返しており、好感度の低下は避けられない状況だ。
トランプ氏はこれまで「民主党が政治的利益のために生活コスト危機を作りだしている」と強弁し、「生活費高騰の原因を作ったのはバイデンであり、史上最悪のインフレを引き継いだに過ぎない」「(前任者である)バイデンが悪い」と責任転嫁を繰り返してきた。
だが、大統領就任から1年近くが経ち、この言い訳も通用しなくなり、不都合な現実に向き合わざるを得なくなっている。
ウォール・ストリート・ジャーナルは13日、同紙のインタビューに応じたトランプ氏が「自身の経済政策の一部がまだ完全に効果を発揮していないため、来年の中間選挙で共和党が下院で過半数を維持できるかどうか不透明だと表明」と報じた。
トランプ氏は今後、反転攻勢に出るだろうが、打つ手は乏しいと言わざるを得ない。バイデン氏という格好の標的を失った今、海外に新たなスケープゴートを求めることしか残された手段はないのではないかと筆者は考えている。
新たな“標的”は中南米の反米政権
その証左は4日に発表された米国の新たな国家安全保障戦略(NSS)にある。その柱は南北アメリカ大陸における米国の排他的支配権の強化であり、1823年に出された米国の外交基準「モンロー宣言」(米国は欧州政治に干渉せず、欧州も米新大陸に干渉しない)のトランプ版修正案と位置づけられている。
歴史を振り返れば、米国は「裏庭」である中南米地域で、解放者と称しながら帝国的な支配を行ってきた経緯がある。
折しも、トランプ氏は麻薬密輸の撲滅を名目にベネズエラのマドゥロ政権への軍事的圧力を強めている。これに対し、キューバやコロンビアなど中南米の反米政権は猛反発しており、中南米を巡る地政学的緊張が急速に高まりつつある。
だが、中南米の反米政権を新たな標的にしても、トランプ氏の支持率が回復する保証はない。ロイター/イプソスが発表した世論調査によると、ベネズエラ近海で「米軍は麻薬密輸の疑いのある船舶を裁判所の許可なしに攻撃するべきか」という設問に対して「ノー」は48%、「イエス」は34%だった。
このように、トランプ氏が国内外で混乱の火種となる危険性が高まっている。悩める超大国の今後の動向について、引き続き最大の関心を持って注視すべきだ。
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