「命を削って描いた『電影少女』の原画が盗まれた」 漫画家・桂正和氏が怒りの告発 「警察は被害届を受理してくれず…」

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【全2回(前編/後編)の前編】

「週刊少年ジャンプ」の黄金時代を築いた漫画家の一人、桂正和氏(62)。1989~92年に連載された代表作「電影少女」の原画が、丸ごと盗まれる被害に遭ったそうだ。「犯人の目星は付いている」という事件の経緯と核心部分について、桂氏本人が告発する。

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 SF恋愛漫画の金字塔と称される「電影少女」。モテない男子高校生が、あるVHSテープを再生したところ、テレビ画面から不思議な少女“ビデオガール”が登場して……という物語だ。全15巻のコミックスは、累計1400万部の発行部数を誇る。

 そんな人気作品の原画が目下、オークションサイト「Yahoo!オークション(ヤフオク)」で、立て続けに売買されている。1枚、およそ10万~数十万円で取り引きされており、中には100万円を超えるものもあるというが、

「全ては盗まれた原画です。昨年10月、アトリエの引っ越しを行った際、ドサクサ紛れに持ち去られてしまったのです」

 と、同作品を描いた桂氏その人が、怒りに身を震わせながら語る。

「気付いたきっかけは今年に入って間もない頃、ある人から“『電影少女』の原画が出品されている”と報告を受けたことです。すぐに、大切な物を移した先の倉庫を確認すると、本来ならあるはずの全15巻分の原画が、一つ残らず全て見当たらなかった。さらに、古書店『まんだらけ』などでも販売されていると聞き、筆舌に尽くし難いショックを受けたのでした」(同)

「警察は被害届を受理してくれなかった」

“女の子を描いたら右に出る者はいない”といわれる桂氏。「電影少女」は、少年漫画としては大胆な描写が持ち味で、熱狂的ファンが多い。同じくジャンプ誌上で、83~85年に連載されたヒーロー漫画「ウイングマン」と並ぶ桂氏の代表的な作品だ。

「命を削って描いた『電影少女』の原画を、手違いで処分してしまうことなんて絶対あり得ません。そもそも、引っ越しを始める前から、1巻分ごと封筒に入れてロッカーで厳重に保管していた。『ウイングマン』など他のメジャーな作品の原画は運良く別の場所に預けていたのですが、それ以外の貴重な物はロッカーにしまっていました」(桂氏)

 桂氏は引っ越しの際、約1カ月をかけて大量の私物を整理したが、原画の取り扱いには徹底して目を光らせていたという。

「買取業者に売った不用品は一つひとつ自分の目で確認しましたし、産廃業者にも“腕時計やカメラなどの私物、特に原画は決して捨てないでください”とくぎを刺しています。引っ越し業者にだって、私がロッカーを開けて“ここの原画は、倉庫内のしかるべき場所に運んでほしい”と細かく指示を出しました。もちろん、捨てた物をリサイクル業者に売っていいと、許可したこともありません」(同)

 にもかかわらず、気付けば「電影少女」の原画だけが消えていた。腕時計やカメラ、さほど有名ではない読み切り作品の原画は、きれいに残っているという。

「あまりに不自然で、盗難に遭ったとしか考えられません。そこで今年1月、警察署に行ったのですが、けんもほろろ。どれだけ話をしても“証拠がなければ捜査は難しい”などと、被害届を受理してもらえませんでした」(同)

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