SNSでは「万博コスプレ」が袋叩きに…大炎上した「コスプレイヤー」が万博会場で目の当たりにした“意外な反響”とは

国内 社会

  • ブックマーク

 コスプレイヤーの鹿乃つの氏は、大阪・関西万博に「ダンジョン飯」のマルシルのコスプレで訪問したところ、「万博にコスプレで行くとは何事か」といった趣旨の批判が殺到し、Xが大炎上した。鹿乃氏が反論を始めると、だんだん個人攻撃がエスカレートし、それは現在進行形で続いている。

 鹿乃氏のXを見ると連日炎上しているため、いったいどんな人なのだろうと不安になったのだが、話をしてみると“意外”なほど、どんな質問にも丁寧に答えてくれた。少なくとも、コスプレするキャラへの愛着は深いと思えたし、自分の考えをはっきりと言語化できる能力の持ち主だと感じた。反面、筆者の経験上、そういった性格の持ち主はSNSで炎上しやすいともいえるのだが。

 昔から日本社会では出る杭が打たれやすい傾向にあるが、現代のSNSは江戸時代の村社会を思わせる空気感が蔓延している。とりわけ、人と違った行動をとる人は非常識のレッテルを貼られやすく、鹿乃氏が炎上したのも必然だったのかもしれない。しかし、だからといって実家や最寄り駅といった個人情報まで特定しようとするのは、いくらなんでもやりすぎではないだろうか。

 前回に引き続き、鹿乃氏へのインタビューを掲載。いったいなぜ、コスプレ写真で炎上が起こったのか。率直な疑問をぶつけてみた。【文・取材=山内貴範】

コスプレは人前では隠す趣味?

――大阪・関西万博の公式サイトでは<コスプレまたは仮装をしての入場は可能ですか>という質問に対して、<持込禁止物に該当しないものであれば、装着しての入場は可能です。但し、会場内の公序良俗に反する服装や平穏を乱す行為は禁止です>と案内していました。また、万博会場で露出度の高い衣装を着ていたらさすがに叩かれるかもしれませんが、鹿乃さんのマルシルはそういうわけではありません。なぜ、炎上してしまったのでしょうか。

鹿乃:これまで、コスプレイヤーの間では、“コスプレの趣味は人前では隠さなきゃいけない”とか、“隠れてやらなきゃいけない”みたいな感覚があったと思うんですよ。そういった感覚の人からすれば、万博という様々な国の人や、コスプレに馴染みのない人がいるところでやるなんておかしい、という話になるのは自然な流れかもしれません。

 でも、とにかく万博でコスプレしても規定上問題はないのです。私はルールから外れたことは一切していないんですよ。

 確かに少し前なら、コスプレは世間から変わった趣味だと思われたかもしれません。けれども、今の時代、コスプレに偏見がある人は少ないと思うんですよ。だって、誰でも気軽に楽しんでいる趣味じゃないですか。時代の変化に追いついていない人、コスプレは内輪だけで楽しむものだという考えの持ち主ほど、批判的になるのかもしれません。

――コスプレの是非のような議論であれば、SNSで大いに行っていいし、実際に最初は建設的なやりとりも少なくなかったと思うんですよ。ただ、今は完全に鹿乃さんに対する個人攻撃が中心になっています。

鹿乃:個人的な見解になりますけど、私が思っていたことをはっきり言語化したのが火種になったのだと思います。最初はどんなに批判されても、何も言わないようにしていたんですよ。でも、あまりに一方的な意見ばかり書き込まれるので、論点が違いすぎるコメントには言い返すようになりました。それが炎上を加速させてしまったのかもしれません。

炎上が続いたときのメンタルケアの方法

――アンチに反論をすればするほど炎上が止まらないのは、ネット特有の現象です。精神的に滅入った時期はありませんでしたか。

鹿乃:そうですね。特に、翌月のゴールデンウィーク期間は、本当にベッドから起きあがるのもしんどかったです。私はあくまでも、万博がとても楽しかったから、それを写真や記事で伝えたかっただけでした。それなのに、「おまえが万博を壊した」「おまえのせいで失敗する」みたいなこと言われるのは、さすがにつらかったですね。

 それだけにとどまらず、私の実家、最寄り駅といった個人情報まで特定しようとする人が現れました。「本名を探してきた」とか言って、SNSが盛り上がっているんですよ。確かに、私の反論や伝え方は下手くそだったかもしれませんが、こんなにSNSの人たちとわかり合えないとは、夢にも思いませんでした。

――最近だと、鹿乃さんがディズニーランドのキャストをやっていたときの写真まで発掘され、炎上していました。

鹿乃:ディズニーランドのキャストは2023年頃にやっていて、写真は勤務当時、ゲストさんがSNSに載せてくれたもの。まさかこんな悪意ある拡散がされるとは思いませんでした。こういった過去の経歴や本名まで特定しようとするのは、やりすぎですよ。率直に言ってヤバいと思います。

――精神的に追い込まれたときはどう過ごしていましたか。

鹿乃:毎日違う人と食事に行きました。ありがたいことに、「いつでも連絡して」と言ってくれる人が周りに何人もいたんですよ。「鹿乃ちゃんは鹿乃ちゃんだよ」と炎上前と変わらず接してくれて、本当に嬉しかったです。その時だけはSNSのことも忘れられました。

 今でも全然割り切れはしませんが、炎上の最中だからできることもあると、友人たちが気づかせてくれました。嫌がらせをしてくるアカウントはどんなに通報しても、次から次に新しいものができてしまう。だったらもう仕方ないと考えて、少しでも未来志向になれるような目標を持つことにしました。

次ページ:万博ではたくさんの人が喜んでくれた

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。