レンタル移籍のような「珍トレード」も…プロ野球界を騒がせた「選手交換劇」
11月14日に阪神の投手・島本浩也と日本ハムの捕手・伏見寅威の交換トレードが成立するなど、トレード戦線が急展開を見せている。過去にも多くのトレードが成立しているが、中には“不思議な因縁”とも言うべき「選手の交換劇」もいくつかあった。【久保田龍雄/ライター】
双方の思惑が一致
強力なライバルがFA移籍してきたことをきっかけに、出番を求めてトレードを直訴し、ライバルの前所属チームに移籍する形で丸く収まったのが、2001年オフの中日の捕手・中村武志である。
横浜の正捕手・谷繁元信が森祇晶監督との確執によりFA宣言したことがきっかけだ。
当初谷繁はメジャーリーグ初の日本人捕手を目指し、12月初旬に渡米したが、実技テスト後にメジャー数球団から提示された条件と折り合わず、ついに移籍を断念した。
その後、移籍先を国内一本に絞り、ハワイ滞在中の12月24日、中日へのFA移籍が内定する。
山田久志監督は谷繁を中村と併用して競わせる考えだった。しかし、同年、セ・リーグトップの盗塁阻止率.543をマークした強力ライバルの加入は、盗塁阻止率.218と精彩を欠いた中村の出場機会に大きく影響するのは目に見えていた。
同じ頃、中村も3年契約を希望しながら、2年契約で譲らない球団との契約交渉が難航していた。
そして、12月26日。「17年間も育ててもらって、こういう話になりたくなかったけど、最後のわがままを言いました。自由の身にしてくださいと」とトレードを直訴し、「セ・リーグのほうが育ててもらった恩師(阪神・星野仙一監督)に成長する姿を見せたいという思いがあります」と同一リーグでのプレーを望んだ。
獲得にいち早く名乗りを挙げたのが、谷繁残留に一縷の望みを抱いていた横浜だった。中村は4年間中日の正捕手を務め、打力もある。横浜が獲得すれば、正捕手不在の悩みを解消できるうえ、前述したように中村はセ・リーグ球団を希望していた。結果、双方の思惑が一致した。
通常なら交換トレードになってもおかしくないところだが、「人的(トレード)だと、来る相手にも迷惑がかかる」という中村の意向により金銭トレードになった。
谷繁についても、翌02年1月、人的補償を求めない金銭での移籍が決定し、結果的に「正捕手同士の交換トレード」となった。
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