公園の炊き出しに並ぶ高齢者が急増中… 年金と生活保護「W受給者」の高齢男性は「40代の頃の決断に後悔しています」
「やっぱり生活保護を貰っているというのは恥ずかしい」
炊き出しには、確かに年金受給世代と思しき高齢者たちが列を成していた。大半は小奇麗な恰好で、困窮していると一目でわかるような人は目につかない。
会場に並んでいた65歳の男性は、ネイビーのチェスターコートにバーバリーチェックのマフラー姿。清潔感のある恰好だが、実は年金と生活保護のW受給者だとした上で、こう話す。
「月々に振り込まれる年金の額は8万円です。それだけでは物価も家賃も高い都内で暮らせないので、生活保護を5万円ほど貰っています。贅沢なんかとてもできませんし、なるべくお金を使わないように毎日の食事はスーパーで安売りをしているレトルトカレーなどでしのいでいます」
この男性は明治大学を卒業後、進学校の生徒を対象とする塾講師を生業にしたが、今から20年ほど前に辞めてしまったという。
「当時は月収で40万円ちかく貰っていました。今、受給している厚生年金はその頃に積み立てた分です。勉強を子供に教えるのは天職でしたが、モンスターペアレンツの対応などに疲れて精神的に参ってしまった。46歳の時に辞めたのですが、その決断がいけなかったんです。62歳で腰を悪くするまでは、清掃業や警備員など派遣の仕事を転々としましたが、月収は14万~15万円前後。塾講師で蓄えた貯金もどんどん減って底を突きました」(同)
40代の決断に後悔する日々を送っているという。
「あの頃の自分には“仕事を簡単に辞めるんじゃない!”と活を入れてやりたい。やっぱり生活保護を貰っているというのは恥ずかしい。我々の世代は生活保護を受けている人たちへの偏見が根強くある。僕自身、若い頃は“生活保護受給者は社会のお荷物”と思っていましたから。自分が貰う側になって毎日肩身が狭いですよ……」(同)
大学時代の友人に再会する時が最も辛いそうだ。
「生活保護のことは内緒にしていますが、お互いの仕事の話になると卑屈になってしまう。表面上は楽しくしていても、相手が少し視線を逸らしただけで“馬鹿にされたんじゃないか”と自己嫌悪に陥ります。足腰が悪くて立っているだけでも腰が痛む体になってしまったので、今は仕事をしていません。ほんの少しでもパートなどをしてこの生活から抜け出したい」(同)
生活保護の受給者は約200万人で支給総額は4兆円に迫る
生活保護を巡っては、高市政権が初めて臨む今国会で新たな動きがあった。今年6月、最高裁は2013~15年に厚労省が実施した生活保護費の1割減額を違法とする判決を下した。しかし今月になって国は、専門部会で協議した結果、減額分の補償について全額は行わないという姿勢を示したのである。
今月7日、衆院予算委員会で答弁した高市首相は、
「違法と判断されたことについては深く反省し、おわびを申し上げます」
と言って理解を求めた。
社会部デスクが言う。
「厚労省の前には、補償や謝罪を求める人々が抗議のために集まりました。そもそも同省が生活保護費を減額したのは、社会保障費の増加が問題視されていた時期。あれから10年が経ちましたが、生活保護の受給者は全国に約200万人いて、支給総額は4兆円に迫る勢い。申請者数は5年連続で増え続けています」
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〈【生活保護の支給総額が「4兆円目前」で日本の社会保障は崩壊寸前 国が放置する「モラルハザードの温床」とは】では、炊き出しに並ぶ高齢者が急増する「意外な事情」や、「年金受給」と「生活保護」を巡る“不公平感”の根源など、早急に改革すべき日本の社会保障制度の“機能不全”について、5000文字にわたり詳報している〉
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