いま小泉防衛相があえて「原潜」保有の可能性に言及した理由…動力が“ディーゼル”と“原子力”で異なる決定的な要素とは
韓国の本音は「日本に勝ちたい」
096型は潜水艦発射弾道ミサイルを24発搭載することが可能だと言われている。
「さらにステルス性も強化されていると見られており、大きな脅威となるのは間違いありません。ちなみに2024年には台湾の漁師が浮上した096型を偶然に目撃したと報じられ、大きな話題となりました。さらに北朝鮮も2021年の朝鮮労働党大会で『国防力強化の5カ年計画』の一環として原潜保有を明言しています。韓国も李在明(イ・ジェミョン)大統領がアメリカのドナルド・トランプ大統領に原潜の建造を“直訴”し、一応は認められました。ただ李大統領は原潜の自国建造を考えているのに対し、トランプ大統領はアメリカでの建造を言及するなど、両国の間に齟齬がありそうな気配です」(同・軍事ジャーナリスト)
そして専門家から「オーバースペックになる可能性がある」と危惧されているのが韓国の原潜開発だ。
「原潜の建造と運用には膨大なコストが必要です。アメリカ海軍のように太平洋と大西洋の広大な海域を航行する必要があるのなら、原潜のコストパフォーマンスは抜群でしょう。一方、韓国海軍は黄海と日本海という狭い海域で活動し、この2つの海は水深が浅いことでも知られています。高額な原潜を整備しなくとも、ディーゼル潜水艦で充分に間に合うはずなのです。それでも韓国が原潜建造に並々ならぬ熱意を見せているのは、『日本が持っていない原潜を建造、運用する』ことに国家的な威信をかけている要素も大きいと思います」(同・軍事ジャーナリスト)
日本の潜水艦は世界一
一方、日本の海上自衛隊は広大な太平洋で活動する必要がある。6月に中国の空母「遼寧」が南鳥島周辺で活動したのは記憶に新しい。自民党と維新の政策合意書で原潜の保有を謳うのは当然のことだ──。
ところが軍事ジャーナリストは「日本のディーゼル潜水艦は文字通り世界一の性能を誇っています。この“長所”を伸ばすほうがメリットは大きいと考えます」と指摘する。
日本のディーゼル潜水艦、それも最新の「たいげい型」であれば、たとえ戦う相手が原潜であっても勝機は充分にあるという。
第2回【「原潜保有論」が急浮上するも…最新鋭の国産ディーゼル潜水艦「たいげい型」は原潜を凌駕する能力 専門家は「敵国にとっては相当な脅威です」】では、世界一のディーゼル潜水艦が敵国の原潜を撃沈する可能性についてお伝えする──。
註:小泉防衛相、原子力潜水艦「まわりの国々はみんな持っている」 安保環境厳しく、議論必要(産経新聞電子版:11月6日)
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