「てんや」が大好きな編集者が飲食チェーンの「値上げプロセス」を振り返る…10年前と比べて“軒並み上昇”の実態とは
てんやの新たな楽しみ方を開拓したい
てんやもそうだが、かつてかけうどん(小)が100円だったはなまるうどんは現在360円。元々安過ぎたうえに、揚げ玉とネギを自分でかけられたのだから、今が適正価格なのだろう。
値上げについては、若干耐性がついている。というのも、この25年ほどほぼ毎年タイへ行っているのだが、バーガーキングやマクドナルドのセットメニューは1000円を超えることも多いのだ。むしろ日本の方が安い。人気の豚骨ラーメンチェーン「一風堂」は博多の本店では「本店白丸」が890円。バンコクで見た店舗は「白丸元味」が1080円だった。
ネットではこの数年、カレーチェーン「CoCo壱番屋」が高い、とぼやく声が多数書き込まれている。たしかに2000年代前半まで基本のポークカレーは400円だったが、現在は646円。ロースカツカレーは同様に600円だったのが951円だ。はなまるうどんとCoCo壱はトッピングで客単価を上げる業態だから、基本のかけうどんとポークカレーは安くてもなんとかなっていたのだろう。だが、もはやそうも言っていられない状況であることを感じる。特に、CoCo壱のトッピングが載ったカレーはロースカツカレーやフライドチキンカレーなど、なんとか900円台に留めようという涙ぐましい営業努力も感じる。
コンビニおにぎりもそう遠くない昔はツナマヨ105円、鮭140円などだったが、今はツナマヨが165円で鮭が198円だったりする。海苔が不作で価格が上がっていることも影響している。海苔については、私は日本有数の海苔生産高を誇る佐賀県在住だが、5年前は購入できた「有明一番」という最高級種は今やトンと手に入らない。価格は同じでも10枚入りだった海苔が7枚や8枚入りになっている。
となれば、自炊すれば安いのかといえばそうでもない。かつて100g=98円などで輸入牛肉が買えたこともあったが、今は安くとも100g=258円はする。いかに生活を防衛するか、といえば、18時以降にスーパーへ行き、値引き品を買うことだ。夕飯の準備をする人々はそれ以前に買い物を済ませていることが多いため、店はとにかく生鮮食品を売り切りたい。そのため、4割引きや半額のシールがついた魚介類や肉や総菜、寿司が案外残っているのである。
数時間前まで980円だった寿司が588円になっているのである。みみっちい話ばかり書いてきたが、外食チェーンの話を振り返っていたらついついネットで各社のメニューを見て「コレ、うまそうだなぁ~」と唾が出てくる。てんやについては、季節ごとの限定メニューがあり、これを毎度楽しみにしていた。以前、夏はメゴチが入った天丼があったし、現在は「秋 ご馳走天丼」(1680円)が素晴らしい充実ぶりである。天然大海老・活〆一本穴子・播磨灘産牡蠣×2・大葉だ。
1980年代においても蕎麦屋の天丼は大きな海老天が2匹入って1980円などはよくあった。そう考えると、チェーン店の価格でみみっちいことは言わないでいいような気も。と、こうして振り返った後になって思ってしまった。新たなてんやの楽しみ方を開拓してみたい。




