引退決断「遠藤」はなぜ「角界一しゃべらない力士」と言われたのか 祖父が語っていた“沈黙の理由”

スポーツ

  • ブックマーク

 大相撲の元小結・遠藤が現役引退を決意したことが報じられた。遠藤は石川県出身。日大時代はアマチュア横綱に輝き、2013年に幕下10枚目格付け出しで初土俵を踏んだ。昭和以降最速の所要3場所で新入幕を果たし、ちょんまげなしのざんばら髪姿での快進撃が話題に。当時の相撲界は、その2年前に発覚した八百長問題などが尾を引き、人気が低迷していたが、甘いマスクで強豪をなぎ倒す遠藤人気が爆発、角界の救世主となり、今に至る「スー女」ブームの火付け役にもなった。永谷園のお茶漬け海苔のCMでも広く知られる存在となった。

 その後は小結まで昇進したものの怪我に泣き、成績は徐々に低迷。先々場所、そして十両に陥落した先場所と、左膝の手術で連続全休し、11月9日に始まる九州場所では幕下への転落が決まっていた。35歳という年齢もあり、土俵を降りることを決意したと思われる。

 ***

 その遠藤、角界随一の「寡黙」な力士としても知られていた。金星を挙げてインタビューを受けても、まるで敗れた後のような表情と、口数の少なさはテレビの前の視聴者の間でもしばしば話題になったものだ。その沈黙のわけとは何か。「週刊新潮」では、2018年、遠藤の記者泣かせぶりとその理由について探っている。

(以下、「週刊新潮」2018年8月2日号の記事を再編集しました。文中の年齢や役職等は当時のままです)

渾身の演技

「遠藤は勝っても負けても、とにかく記者には喋らないんです」

 と、スポーツ紙の相撲担当記者は言う。

「場所中は、取組後に風呂に入り、支度部屋に引き上げて、髷(まげ)を結い直してもらいながら記者に囲まれます。でも、遠藤はほとんどなにも話しません。ずっと目を閉じ、質問が出ると答えるまでに間がある。それが長すぎると、われわれは“喋らないんだな”と判断して、次の質問に移ります」

 だが、記者のことは観察しているようで、

「とんちんかんな質問は無視するし、初めて見る顔にもまず答えない。“客席からこんな声がかかりました”など観客について聞くと、比較的応じるものの、答えてもものすごく小さな声で、取り囲んでいる記者たちの一番前にいても、正面でないと聞こえないほどです」

 別の相撲記者からも、こんな話が。

「(2018年)4月1日、伊勢神宮での奉納大相撲の際、遠藤は巡業部屋で囲み取材を受けましたが、いつものようにほとんど話さなかった。その後の巡業中にも、“奉納大相撲のとき喋ったのだからもういいだろ”と言って、なにも喋らなくなったのです」

 だから、永谷園のCMでの笑みは「渾身の演技」というのが記者の間の定説だが、実は喋らないだけではない。冒頭の記者によれば、

「普段も部屋にこもって出歩かないし、飲みに行かず、目撃情報もゼロ。趣味はない」

次ページ:「うん」しかない

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。