「転職なんて当たり前」の時代だからこそ「会社にしがみつく人生」が有利になる理由…65歳を過ぎてから威力を発揮する“転職0回の強み”とは

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 大企業の中には、「早く退職するヤツがエラい」といったマウンティング文化が時に存在する。この背景には、「新卒で入った会社はぬるま湯のような場所で、外に出て本気の勝負をしないと社会で通用しない」「転職をすることによって、給料も上がり、自分の市場価値を高めることができる」というものがある。【中川淳一郎/ネットニュース編集者】

 そこからいわゆる「ジョブホッパー」になり、転職を繰り返すわけだが、新卒で入った会社の同期との飲み会では、意気揚々と新会社の激しい競争環境についてや、転職先が外資系の場合は海外出張があることなどを誇らしげに語る。そして同期によるこの言葉を待つのだ。

「へぇ~すげーな。オレなんて同じ場所にしがみついていて、給料もあまり変わらないし、海外出張なんて行ったことがないよ。グローバル人材なんて想像もできない」

 しかし、バラ色に思えた転職先でも、ある時から給料が上がらなくなる。まぁ、40代中盤以降だろう。リストラに遭うこともあるのだが、それをフェイスブックで「新たな人生の船出」などと書いたり「これまでのキャリアで縁のあった〇〇社長の会社に転職することになりました」と報告したりする。

 そして、目立ってフェイスブックの投稿数が多くなり、なんとか自分が仕事で活躍している様をアピールするようになる。「〇〇さん、実はヒマなんですか……?」と見ている人は言いたくなるのだが、そこは大人。そのような無慈悲な言葉はかけない。

 なまじっか、古巣に残る人間に対して天狗になっていた面もあるため、もはや弱音を吐くことはできなくなり、52歳になろうものなら、給料の面で古巣に残った場合よりも少なくなってしまう。ここから新卒での入社から同じ会社にい続ける人、いや、転職者をかつてはキラキラした存在だと見た「会社にしがみついた人間」の方が有利になっていくのだ。

同じ業界に居続けると発生する強み

 もちろん、若手の台頭もあり、社内での仕事は減っていくだろうし、給料も頭打ちだったりボーナスも減ったりはする。しかし、その金額は決して世間的には悪くない。ましてや、その会社の同期だった転職癖のついた人物よりは高かったりするのだ。

 そして、一旦の退職が迫る57~58歳頃になると、激務からは離れており、有給休暇も取りやすくなっている。そこで、同期や一緒のプロジェクトチームになった若手らと一緒に北海道やら九州旅行をしたりするのである。飛行機で当地まで行き、ワンボックスカーに男6人乗ってエンジョイする。

 会社の業績がよっぽど悪くない限りは、60歳以降も再雇用を打診され、65歳を過ぎてからのキャリアプランの相談にまで乗ってもらえる。そして、65歳以上の再就職で威力を発揮するのが、「同じ業界にい続けたこと」なのだ。

 これはトップクラスの人材に限られるだろうが、昨今話題のJICAの仕事を得た人物が私の知り合いだ。彼は大手自動車メーカーで定年まで勤め上げたが、部品購入の現場を長年担当した。いわゆる「購買部」である。

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