金の値上がりに飛びつくのは「悪魔の選択」 「一般投資家は、高値づかみとなるのがオチ」 専門家がリスクを指摘
年内に2万2000円に達する可能性も
こうした状況下、店頭でも金取引は活況を呈するばかり。前出の田中貴金属工業に聞くと、
「年代、性別を問わず多くのお客様にご利用いただいています」
としながら、
「23年に1万円に達した時には売却する方が多く、そこから価格が上昇し続けると購入が増える傾向にありました。本年9月1日に1万8000円を突破した時にも同様の傾向が見られたのですが、2万円を超えた週から翌週にかけては、購入する方の割合が最初から多くなっています」
売れ行きに製造が追いつかず、同社は10月3日から小型地金の販売を一時停止する事態となってしまった。
今後の展開について、前出の亀井氏は、
「為替レートで円が1円動くと金の国内価格はおよそ125円変わる。つまり、もし米国の利下げで10円円高となれば、1250円値下がりします。ただし、ドルが安くなれば世界で金が買われやすくなるので、1トロイオンスの価格は上昇します。円高での値下がりと相殺しても、国内価格はさほど下がりません」
続けて先の池水氏も、
「米国の追加利下げ、中東情勢のさらなる悪化などが重なれば、年内に4000ドル(1トロイオンス)、円建てで2万2000円に達する可能性もあります」
本質はリスクヘッジ
が、その一方で経済アナリストの豊島逸夫氏は、
「私は常々、有事の際に金の価格が上がったからといって飛びつき“ドカ買い”するのは『悪魔の選択だ』と、一般投資家に言い続けています」
とのことで、
「有事というのは、プロにとって絶好の“売り場”です。投機筋はあらかじめ有事を察知して金を買い集め、いざとなったら利益確定売りを浴びせます。一般投資家が“やれ有事だ”と慌てて買いに走ってもはしごを外され、高値づかみとなるのがオチ。そもそも金は配当や利息といったインカムゲインを生まないため、資産運用においては脇役と心得るべし。金の本質はリスクヘッジにあるのです」(同)
悪魔にそそのかされて欲を出しても後の祭り。有事の落とし穴に陥ってはならないのだ。
「平時において買い増しし、市場が混乱して株価が下落するなどした時に金を売って利益を確保する。本来の“有事の金”とは、これを指すものです」(同)
相場は必ず下がるもの。足をすくわれないためにはいかに振る舞うべきか。経済ジャーナリストの荻原博子氏が言う。
「金相場の見極めは素人には難しいので、短期的に儲けようとはせずに日頃からコツコツ買い足しておくことを勧めます。現物であれば、銀行や証券会社の『純金積み立て』があります。ただしこちらは手数料もそれなりにかかるので、暮らしの中で金を楽しむなら、ネックレスや指輪などの装飾品で買うと、いざという時は換金することができます」
有事に心躍らせるなど、厳に慎まねばならないというのだ。
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