米国民40%が「貯蓄なし」の窮状、「トランプ不況」「失政」にMAGA派も落胆…そして世界は“資本主義の転換点”を迎える
インフレ懸念も再燃
米国経済の雲行きがますます怪しくなっている。
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ロイターは9日、連邦政府職員の約3分の1が無休の休暇に入る中、行政サービスが麻痺することが懸念されていると報じた。次いで10月13日には、ベッセント財務長官が連邦政府機関の一部閉鎖について、実体経済に影響を及ぼし始めていると警鐘を鳴らした。閉鎖期間が長期化すればするほど、地域経済を中心に悪影響が及ぶことになるだろう。
インフレ懸念も再燃している。米ニューヨーク連銀が7日に発表した9月の消費者調査では、1年先のインフレ期待は3.4%、5年先のインフレ期待は3%と、ともに前月の3.2%、2.9%から上昇した。
トランプ関税の影響が今後出てくることも確実だ。ゴールドマン・サックスは、米消費者は年末までに関税コストの55%を負担する可能性が高く、物価上昇が加速するとの見方を示した。
「トランプ関税」の効果は期待外れか
インフレは米国民の老後の生活も圧迫している。「退職の新たな経済学」と題するゴールドマン・サックスの最新の調査によれば、現在、米国民の40%が貯蓄なしでギリギリの生活を送っており、1997年の31%から大幅に増加している。
さらに、生活費に事欠く米国民の割合は2033年に55%、2043年には65%に達する可能性があるとしている。
金融サービス企業ウォレット・ハブの最新の調査では、43%の米国民が死ぬまで働くことになると回答した。
マイナス面はあるものの、関税引き上げは米国内の投資を活発化させるとの期待があった。だが、現実は厳しいと言わざるを得ない。
トランプ大統領は9月「現在、非常に多くの自動車工場が建設中、または設計中だ。これらは中国やメキシコからやってくる」と豪語した。だが、米国に自動車工場の建設ラッシュが起きている兆しはほとんどない。
米国経済への打撃となる要因は山積み
逆に、トランプ政権の移民規制が自動車関連産業の足かせとなっている。アフターマーケット(車購入後の整備や保守などの市場)は顧客や労働力の多くをヒスパニック系が支えているが、移民取り締まりの強化により、需給両面で打撃を被っている。
移民取り締まりの強化は米国の人口動態にも暗い影を投げかける。米議会予算局は9月、死亡数が出生数を上回る自然減が2031年から始まるとの予測を公表した。
移民流入数の減少に伴って米国内の出生数が減少することを理由に、従来の予想を2年早めた形だ。移民の流入が続けば、米国の総人口は2031年以降も増加し続けるだろうが、そのペースが鈍化すれば、米国経済の潜在成長率が低下することになる。
米国の科学技術力の低下に対する懸念も強まっている。今年のノーベル物理学賞に決まった英国出身のジョン・クラーク氏は7日、米国の科学関連予算が大幅に削減されることは極めて深刻な問題だと危機感を露わにした。
連邦議会で審議されている2026会計年度予算では、基礎研究が大幅に削減された。これによる年間の経済損失は100億ドル(約1兆5000億円)に上るとの指摘が出ている。
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