「生涯楽天」から一転…則本昂大(34)に“メジャー移籍”報道 ターニングポイントは守護神のプライドを傷つけられた一戦か

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ターニングポイントになった試合

「則本にとって、ターニングポイントとなったのは8月31日の日本ハム戦でした。両チーム無得点のまま延長戦に突入し、11回表に楽天が1点をもぎ取りました。その1点を守り切るため、三木肇監督(48)は則本をマウンドに送ったのですが、一死三塁のピンチを招くと、則本と同じ右の宋家豪(33)にスイッチしました」(前出・同)

 翌9月1日の報道を見ると、「三木監督の執念の采配」と称賛されていた。3位争いで負けられない一戦も続いていた。しかし、守護神・則本のプライドはズタズタに引き裂かれていたはず。三木監督が「鬼」に徹したのは、8月11日の埼玉西武戦で則本が2点リードを守れず、サヨナラ負けを喫した悪夢が過ぎったのだろうか。その後、試合中盤の6回などで投げることも多くなった。

 また、則本が救援に失敗した埼玉西武戦と前後して、一軍に再昇格してきたのが、高卒4年目の左腕、泰勝利(21)だ。9月30日の千葉ロッテ戦でプロ初勝利を上げたが、再昇格後は6回3分の1を投げ、失点ゼロ。奪三振率も「19.89」と高い数値を残している。楽天の関係者とブルペン陣の話をすると、必ず名前が出てくるのがこの泰で、「将来のクローザー候補。松井裕樹(29=パドレス)の後継者」との期待論も多く聞かれる。泰は身長172センチと小柄ながら、体付きや相手打者を力でねじ伏せる投球スタイルも松井に似ている。

「年俸3億円の7年契約を則本に提示したのは、石井GMでした。18年8月、取締役ゼネラルマネージャーとして編成トップに迎えられ、海外FA権の取得も目前で、メジャーリーグ志向の強かった則本を引きとめてみせました。則本残留が石井GMの初仕事になったと言っていいでしょう」(チーム関係者)

 チーム関係者や地元メディアの話を総合すると、則本とチームの間には遺恨のようなものはないようだ。

「過去、NPBでひと仕事を終えたベテランがマイナー契約を結んだことが何度かありました。一つの例を出すと、選手側から米エージェント会社に相談があり、来シーズン以降の契約が厳しいことや大幅減給が免れない状況を打ち明けられました。エージェント会社としてはマイナー契約もあり得る状況も伝え、本人がそれでも構わないのであれば売り込みを始めます。その際、エージェント会社側から選手の所属する球団に内々にお願いをするんです。自由契約や大幅減給になるようであれば、FA権の行使を認めたことにしてくれないか、と」(ア・リーグ中地区球団スカウト)

 則本の去就について、このような話し合いがされたかどうかは不明だ。ただ、球団は今回の米球界挑戦には賛成も反対もしていない。

「皆さんの常識」と「球団の常識」

 さらに思い出されるのが、則本が松井に代わるクローザー転向を打診されたときのことだ。則本は今後の目標として「100勝&100セーブ」を明言した。「NPBではまだ6人しかいない(MLB成績を含むと8人)」と眼を輝かせていた。目標達成には、あと52セーブ足らない。前出の米国人ライターによれば、則本のMLB挑戦は「全くのノーマークだった」という。菅野の成功が追い風になる可能性も語っていたが、状況によっては、NPBの他球団とも交渉する可能性もある。

「残留が伝えられた三木監督は若手を起用するので、地元ファンは好意的に見ています。シーズン終盤に頭角を現し、インパクトの強いピッチングを続けた泰もそうですが、野手では6年目の黒川史陽(24)が期待されています。中盤戦以降、3番や4番を任されています」(前出・地元メディア)

 世代交代の過渡期にあるようだが、来季、則本が他球団のユニフォームを着てチームに襲い掛かってくる可能性も捨てきれない。石井GMが三木監督の続投を明言する前、1年で指揮官の進退を問う性急ぶりを問われ、こう答えていた。

「タイムリミットが皆さんの常識と僕たちの常識と違うんで、何かここでいろんなものを話さないといけないということではない」

 チームの功労者がまた一人、去っていく――。

デイリー新潮編集部

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